拝啓 神奈川県小田原市長 加藤憲一 様

アメリカのトランプ大統領が大統領令を連発しているのを見て、地方自治体の首長が議会の議決を経ずに決定できる専決処分を連想してしまいました。

2009年から10年にかけて鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(当時)が連発して職員や議員のボーナスを大胆にカットしたことで有名になりました。

竹原市長は最後は市民のリコールで市長の座から引きずり降ろされましたが、市職員や議会への厳しい対応は、一時、市民の熱い支持を受けました。

難民の入国規制について反対運動ばかりがクローズアップされていますが、トランプ大統領の決定を支持する人の方が多いとの世論調査結果も出ています。

ただ、熱い支持が長続きするかどうかは別物です。大統領の決定に対し国際的批判が強まれば徐々に熱気は冷めてくるとは思いますが少し先のことでしょう。

こうしたトランプ政治を誕生させた一番の功労者はオバマ前大統領だと思います。オバマ大統領の政治がトランプ大統領を誕生させたのです。

美しい言葉を連ねた演説の名手ではあっても現実の政治は変える実践力は持ちませんでした。「チェンジ」を高らかに宣言したものの虚しい響きに終わりました。

オバマ政治の反動が出ているのだと思います。きれいごとばかり並べても生活は悪くなる一方ではないかといううっ屈した感情がトランプ現象となったのだと思います。

前置きが長くなりました。小田原市の加藤憲一市長は、2008年5月オバマ大統領が誕生する半年前に「チェンジ」を掲げて市長選挙に圧勝しました。

その日から9年近くが過ぎました。巧みな弁舌は健在です。しかし主要政策の実行という面では疑問が残ります。その象徴が市民会館の建設問題の迷走です。

もし加藤市長が3年後、3期で市長の座から降りると仮定するとアメリカの現在の政治状況のように反動の政治が誕生する危険があると思えてなりません。

小田原の経済最優先、「小田原ファースト」の政治を掲げる政治への反転です。周辺市町との広域連携の潮流とは明らかに逆行する政治の動きとなります。

加藤憲一市長に心してもらいたいのは、小田原の再生と繁栄は、周辺市町との強固な連携があってこそのものだという強い意志を持って欲しいということです。

経済は、当座の利益を追い求めます。しかし、本物の政治は、一時的には損であるように思えても反対を押さえて長期的な利益を確実にする営みです。

経済人が政治に手を染めても上手く行かない理由はここにあります。目先の利益を超越する構想とその構想を語り市民を説得する弁論の二つがなければなりません。

加藤憲一市長はこうした素質は十二分に有してます。様々な意見を聞き過ぎるために現実政治に翻弄されてその本来の素質が開花出来ていないように見えます。

そろそろ秘めた資質を表に出す時です。県西部域全体の繁栄を考え強固な広域連携に向けて号令を発する時です。その突破口として南足柄市との合併があります。

市民会館建設問題を始め加藤市長の前に立ちはだかっている様々な難問は、広域連携の視点から捉え直すことによって解決の糸口を見出せると思います。

お詫び:竹原信一市長(当時)を「竹山」と誤って表記していました。訂正いたしました。大変失礼いたしました。