菅政権とデザイン力の欠如

後手だとの批判が絶えない菅政権。何が原因かと考えてみるとデザイン力に行き着きました。

為すべき政策の方向性を確認し世論の動向を見極めて政策判断をすれば政局がすべて回るとは行きません。

論理的な思考の外にある心理ゲーム的な要素が政治には常に付きまとうからです。理屈通りにはいきません。

目指すべき方向にもっていくには情報をコントロールして世論を喚起する操作が必要です。

政策の実現を図るためには止む得ません。手の内を全て明かすという訳にはいかないのが実情です。

山田真貴子内閣広報官の辞職をめぐるドタバタ劇を振り返ってみるとデザイン力の欠如が一目瞭然です。

高額接待が明るみに出た時点で辞職やむなしは常識ですのでこの判断を誤っているようでは話しになりません。

辞職の仕方はデザイン力によります。転んでもただでは起きないやり方があります。

菅総理大臣の求心力を増す形で「泣いて馬謖を斬る」という台本は描けるし演じ切ることは可能です。

加藤官房長官が午前か午後の記者会見の中で山田擁護をあえて打ち出した後で菅総理が登場します。

総理執務室に加藤官房長官と山田広報官を呼び総理大臣として辞職を求め決着させることはできました。

間髪入れずにあっと驚く形で後任の発表があれば更に菅総理の求心力は持ちこたえたはずです。

新型コロナの緊急事態宣言の解除をめぐっても同様のことが言えます。デザイン力が欠けてます。

新型コロナ対応で今最も求められているのは国民に対する危機感の喚起であることは言うまでもありません。

ワクチンは接種が始まったばかりですし特効薬は依然として開発されていないのですから当然です。

新型コロナ対策で大きな要素を占めているのは国民との間で切り広げられる心理劇だと言えます。

大阪府などの6府県の前倒し解除をめぐり他の方法を取るべきでした。禍根を残すのは確実です。

国民に緊張感を持ってもらうためには解除必至の情勢の中で菅総理が前倒しせずを決めるのがいちばんです。

意外感によって国民の緊張感は高まります。政府の分科会の尾身会長らは菅総理の舞台回しに舌を巻くでしょう。

前倒し解除が常識化している中で解除してしまってはタガが緩むのは自明のことです。失敗でした。

7日までとなっている1都3県の緊急事態宣言を解除するかどうかの判断が迫ってます。知事たちは慎重です。

スケジュールに沿って手続きを踏み結果として解除せずに延長しても菅総理は後追いのかたちです。

前倒し解除していなければ7日には6府県の解除、首都圏は延長という選択がさすがと受け止められたはずです。

先んじて解除カードを切ってしまっていますので手持ちがありません。ズルズルと延長となります。

菅総理の指導力のなさが目立つやり方です。予定を度外視して迅速果敢に再延長の手続きに入るしかありません。

菅総理の指導力で知事より先に少なくとも2週間程度の延長を決定するシナリオを演じ切るべきです。