続・菅政権とデザイン力の欠如

菅政権のデザイン力不足を書いたのは菅総理が師と仰ぐ梶山静六元官房長官がその道の達人だったからです。

菅総理は政局の動かし方の多くを梶山さんから学んでいるはずですので知らない訳がありません。

次々と襲い掛かってくる難題にたじろぎ梶山さんの教訓を忘れているのではと首を傾げるほどです。

私が最初に梶山戦略と戦術に驚嘆させられたのは1992年梶山さんが自民党の国会対策委員長の時でした。

総理は宮澤喜一さんでした。政治改革の焦点となっていたのが衆議院選挙制度改革でした。

抜本改革の前に定数是正が行われ是正に消極的だと思われていた梶山さんは突如として9増10減案を出しました。

ショックドクトリンではありませんがいきなりの提案に自民党内は鳩が豆鉄砲みたいになり合意に至りました。

私は案を温めていておくびにも出さずにここぞというタイミングで出してきた手際に驚きました。

1997年に橋本政権の官房長官だった梶山さんは橋本総理の9月の中国訪問を前に策略をめぐらせました。

テレビ番組で台湾海峡も日倍安保の対象と理論的にはなり得ると中国を刺激する発言をあえてしました。

梶山さんの狙いは官房長官の勇み足を橋本総理が収拾することを総理の手柄にしようと目論んでました。

訪中前に事態は収まり橋本総理は満を持して中国を訪れることが可能となったのです。

このぐらいの手練手管を持っていないと一寸先は闇と言われる政界を渡ることはできません。

師と仰ぐ梶山流の戦略と戦術を応用し困難な局面を乗り越えることに力を注ぐべきだと思います。

梶山流にはいくつかの要諦があります。物事を大局から眺め流れを的確に把握することです。

続いて、手の内を明かさずにぎょっと言わせる策を用意しここぞという時に勝負をかけることです。

最後のひとつは緻密過ぎるぐらいの段取りを整えることです。梶山工程表と呼ばれてました。

梶山さんは国対委員長、幹事長、官房長官として軍師的に働いたものの総理の経験はありません。

総理と軍師では振る舞い方に決定的な差があります。いちばん良いのは梶山級の軍師を側近に置くことです。

加藤官房長官は官僚出身で軍師のDNAはありません。菅総理が台本を書いて役者に演じさせるしかありません。

緊急事態宣言は、2週間程度の延長の方向性を総理自身が昨晩述べました。妥当な振る舞いだと思います。

延長の流れは変えようがありません。あとは決め方です。総理が慎重姿勢から一転するのは不可避でした。

知事の要請を西村大臣が受けて総理に挙げて諮問会議に諮りなどと時間をかけている余裕はありません。

ぎりぎり指導力を保てたといったところでしょうか。もっと迅速果敢な急転換が出来なかったものかと思います。

小池都知事が既に慎重姿勢を示していました。押し込まれたという印象はどうしても残ります。

小池都知事がぎょっとするような踊り方を見せて欲しいです。そうでないと政権への逆風は止まりません。