「裁判所の門をくぐる者は、一切の希望を捨てよ!」

絶望の裁判所 (講談社現代新書)

(写真はアマゾンホームページより)

法に照らして正義を問ふ場が裁判所です。その内部が重い病に冒されているという告発の書が出ました。『絶望の裁判所』というタイトルがついてます。

著者は、最高裁判所にも勤務したことのある元エリート裁判官の瀬木比呂志さんです。一昨年、明治大学の法科大学院専任教授に移りました。

現在の裁判所は、最高裁判所長官とそれを支える事務総局を頂点にして人事の網がかけられており自由な言論は抑圧されていると述べています。

最高裁の意向に逆らった判決を書こうとするのならば人事で飛ばされることを覚悟しなければならないみたいな内情だというのです。

刑事事件の判決に一般の国民が参加する裁判員制度の導入も刑事事件系の人脈の権力の拡大の為に利用された側面が大きいとまで言い切っています。

裁判員制度という一大改革を進めることを通じて最高裁を頂点とする権力機構を刑事事件系の派閥が牛耳ろうとしたとも取れる表現です。

人事で完全に縛られている裁判官は精神的な奴隷状態でこの状況に耐えられる裁判官の方が異常と思えると感想を述べています。著者本人は耐え切れず辞めたということです。

現在の裁判所内の体制をここまで悪くした張本人として竹崎博允(ひろのぶ)最高裁長官を名指して批判してます。言い回しは優しいですが内容は過激です。

最高裁判事として学者の枠から任命された女性裁判官のことを能力不足とまで述べているのですから余程のことです。述べずにはいられない感情があるのでしょう。

竹崎最高裁長官は、任期を残して今月末にやめます。後任は寺田逸郎さん。最高裁の民事局長を務めた方で親子2代の最高裁長官として話題になってます。

この人事と瀬木さんの著書の出版が関連あるかどうかは解りません。しかし刑事系ではなく民事系を選び、血筋も考慮したとも取れます。瀬木さんの続編を期待します。