セゾンの堤清二さんの理想と現代まちづくり

若い方は「セゾン」と聞けばクレジット会社を連想するでしょう。
70歳目前の私たちの世代は渋谷の「パルコ」を思い出します。

若手実業家堤清二さん率いる企業グループの冠が「セゾン」でした。
池袋西武の成功に続き渋谷に進出した堤さんは個性豊かな百貨店を立ち上げました。

イタリア語で「公園」を意味する「PARCO」と名付けました。
単なるデパートではなくおしゃれで一歩先を行く文化の発信拠点でした。

堤さんはホテル事業へと進出しました。
銀座で小さな超高級ホテルを開業しました。

インターコンチネンタルホテルグループを買収し横浜みなとみらいに進出を果たしました。
積極投資戦略はバブル経済崩壊とともに経営難に陥りました。

2000年グループは解体し堤さんも経済界から姿を消しました。
ところが昨年再び亡霊が蘇りました。

ヨドバシカメラによる池袋西武(正確には池袋西武・そごう)の買収劇です。
所在地の豊島区長は地域文化を損なう恐れがあるとして懸念を示しました。

池袋西武には著名な現代アートの美術館があり地域文化の殿堂でした。
安売りのヨドバシでは文化の担い手にならないという拒否感があります。

堤さんの経営は文化産業の担い手たらんとの理想を追求するあまり経営がおろそかでした。
不動産投資のずさんさが象徴でした。

しかし堤イズムは過去の遺物かというととんでもありません。
現代のまちづくりに重い問いかけをしています。

現代のまちづくりには効率性が重視され「稼ぐ」ことすら推奨されてます。
しかしそれだけでは薄っぺらなまちづくりに堕します。

根本に高い理想が貫かれていなければなりません。
地域文化の創造拠点を実現しようとの堤さんの発想には学ぶべき点があります。


『セゾン 堤清二が見た未来』(日経ビジネス文庫)という格好の著書が出ました。
経済の論理を越えたいともがいている首長にお勧めです。

栄光だけでなく挫折も書かれてます。
理想実現の手引きとなります。