アメリカシフトの時代だからこそ日米同盟絶対で思考停止しない

戦後日本経済の躍進を支えたのは鉄鋼です。
その中核は新日本製鉄です。

「鉄は国家なり」とまで称されました。
現在のトヨタを上回る存在感でした。

新日鉄会長から経団連の会長になったのが稲山嘉寛(よしひろ)さんでした。
1972年の日中国交正常化以後の日中経済協力をけん引しました。

象徴が上海の宝山製鉄所です。
稲山さんの日中経済協力にかける熱い思いが形になりました。

新日鉄の後継企業の日本製鉄が宝山製鉄との合弁を解消すると発表しました。
日中経済史の画期となる出来事です。

日本製鉄はアメリカを代表するUSスチールの買収に注力してます。
中国を捨てアメリカへシフトとの印象を持ちました。

中国市場での日本車の販売不振など経済状況を踏まえた決断だと思います。
しかし経済原理だけでなく国際政治の現状を象徴している出来事と見ることができます。

米中対立が影を落としてます。
アメリカの圧倒的な影響下にある日本の進路に選択の余地はなくアメリカを選ばざるを得ません。

ただアメリカを全面的に信頼してよいかというと別問題です。
アメリカはアメリカの国益を最優先に考えるからです。

USスチール買収は労組の反対を背景に有力政治家が同調し決着がついてません。
アメリカは日本の思惑で制御できる国ではありません。

経済ではなく安全保障にかかわる問題ではアメリカの姿勢はより身勝手になります。
ロシアはダメでイスラエルなら容認といった二枚舌は朝飯前です。

アメリカの国家戦略上必要があった時のみ血を流します。
日本を守るためなどという建前は幻想にすぎないと考えておいたほうが良いです。

アメリカの戦略に従わせるため日本を利用することは大いにあり得ます。
日米同盟は日本に極めて厳しい決断を迫る場合があるという現実を直視することが不可欠です。

中国への嫌悪から盲目的にアメリカに依存することは日本の未来を危険にさらします。
日米同盟絶対で思考停止は避けなくてはなりません。