服部龍二『日中国交正常化』中公新書2011年を読み直す


高市総理の台湾有事発言への中国の反発は強まる一方です。
中国がなぜここまでいやらしく日本をいたぶるのか考えるチャンスでもあります。

中央大学教授の服部龍二さんが書いた『日中国交正常化』は格好の参考書です。
2011年に出版され中公新書で読みやすいです。

1972年の日中国交正常化はひとつの物語が大前提です。
台湾は中国の一部で日本はその立場を尊重するという「ひとつの中国」論です。

この立場からすると中国にとって台湾問題は基本的に中国の国内問題ということです。
高市発言は第3者が中国の内政問題にくちばしを入れたことになります。

服部さんの著書に戻ります。
日本は中国との国交正常化交渉で巧妙な一文を差し込みました。

中国側の立場を十分理解し尊重するとしたうえでの一文です。
「ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する。」としています。

これは台湾は中国に返還されるとされる条文です。
当時の中国は中華民国でしたが中華人民共和国と読むことができます。

この条文を差し込んだ意味はもう一段深いところにあります。
台湾問題は平和的手段で解決するというのが自明だとの意味を込めたとのことです。

外務官僚による曲芸のような交渉の末に日中国交正常化が成し遂げられました。
この外交成果をけ倒す発言を総理がしては元も子もありません。

日本の立ち位置を原点に戻すことです。
発言撤回しかないと思います。

撤回は事態の悪化を放置してほぞをかまないよう手を打つ妙手にほかなりません。
それでこそ堂々と中国に物申すことができます。

高市総理が原点回帰の勇気を示すことは大局を見た判断だと評価されるからです。
対外的にも国内的にも高市政権にとって基盤強化となります。

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