地域ファーストの”名望家精神”が瀬戸屋敷再生の原動力

現代で”名望家”なる言葉は死語でしょう。
こだわっている人は絶滅寸前だと思いますが私はそんなひとりです。

そもそも名望家とは何かです。
一定の資産と教養を身に着け地域の政治や経済、文化で一目置かれる存在とされます。

教科書的な解説です。
私は異なる解釈をしてます。

地域における名望家精神の中心をなすのは「井戸塀政治家精神」だと思います。
「井戸塀」とは地域のために尽くした結果、残った財産は井戸と塀だけだというたとえです。

明治時代から戦前にはこの手の地方政治家は多数いました。
没落してしまった家も多いです。


開成町のかやぶき屋根の古民家の当主瀬戸家もそんなお宅のひとつです。
瀬戸家は江戸時代の名主を務めた家柄で豪農でした。

戦前から戦後にかけて当主を務めた瀬戸格(いたる)さんは初代開成町長でした。
長男が早くに亡くなられたこともあって瀬戸家は存亡の危機に瀕しました。

開成町で代々続く家を消滅させてはならないと決心したのが瀬戸屋敷再生の第一歩です。
町長駆け出しの頃でしたが本気で取り組めば意は通じます。


1800坪の瀬戸屋敷の持ち主の次男の方が土地と建物を全て町に寄付してくださいました。
瀬戸家の名誉を守ってくれるならばとの一大決断でした。

この行為は名望家精神が瀬戸家に脈々と受け継がれてきていたことの証明です。
個人の経済的利害より町のことを最優先に考え寄付という結論に達しました。

今年は瀬戸屋敷が復活して20年の節目の年でした。
瀬戸家の名望家精神に光を当て直す機会にしないとなりません。


地域のために尽くす名望家精神が受け継がれてきたことで瀬戸家の再生が成し遂げられたのです。
この事実は後世に断じて伝えないとなりません。