測量の時代、地理と地学の時代がやってきた。

(日本写真測量学会発行)

6日付の朝日新聞の一面のトップ記事は「高校新科目に『公共』」でした。選挙権が18歳に引き下げられるのを踏まえて政治参加などを学ぶ科目だということです。

当然のことだと思います。ただ、一番の教師は、現役の政治家です。有権者の代表に相応しい行動をしていれば生きた教科書として存在感を高めることになります。

私が必修にしたらどうかと思う科目は地理と地学です。日本は、地震、津波、台風、噴火、世界有数の災害国です。日本列島の生い立ちから来る宿命です。

ユーラシア、フィリピン、太平洋という三つのプレートがぶつかった位置に日本列島は存在します。プレート境界は地震の巣と言われます。

必然的にマグマの吹き出し口とも言える火山も多く危険と隣り合わせです。その一方で独特の美しい景観や温泉も出来て観光資源にもなり経済生活が営まれます。

こうした自然とその自然条件の上に形成される人間生活を学ぶ科目は地理と地学です。日本の全ての国民が最低限の知識を身に付けておく必要があると思います。

地理も地学も現在の高校では絶滅に近い状態だと聞いてます。大変危険なことだと思います。人間が生きる上で大前提となる自然を知らなくて良いはずがありません。

昨日、東京・白山にある日本写真測量学会を表敬訪問しました。測量ですから地理と地学の根幹をなす学会の一つです。3000人学会員がいると伺いました。

現会長で東京電機大学教授の近津博文さんらと食事しながら懇談できました。前会長はGPS測量の世界的権威で東大の名誉教授の村井俊治さんです。

近津さんらに地理と地学を学ぶ必要性を力説しました。同時に測量の大切さも合わせて語りました。私は測量の時代だと確信しているからです。

私たちの住む神奈川県西部を事例に話をさせていただきました。明治維新の廃藩置県で流域単位の治水の体系は壊れてしまい県境で河川は分断されてしまってます。

富士山と箱根山、西丹沢を源流とする酒匂川は、静岡県と神奈川県に分かれ静岡県内では鮎沢川と名称まで変わってしまっています。一貫した治水は不可能です。

江戸時代は小田原藩の管轄区域にあり流域全体が一つでした。近代になってばらばらにされました。このままで良いはずがありません。

ゲリラ豪雨による土砂崩れは頻発しています。万が一富士山の噴火が起こったら酒匂川流域は砂に覆われて甚大な被害を受け大洪水の危険性に直面します。

流域全体を一つに見立てて捉え直すことが求められています。その際基礎的なデータを提供するのは最先端の写真測量技術を活用した流域の図面です。

県という人工的な行政単位によって分断されてしまっているので流域全体を俯瞰する発想は無くなっています。この現状を改めることが緊急課題です。

近津会長に写真測量の出番だと訴えました。近津会長も良く理解していただいたと思いました。10月に学会の大会があります。この席でも同様の訴えかけをすることにしました。

こうした学会での実践的な問題提起を通じて高校での地理と地学を学ぶ重要性を再認識する動きへとつなげていきたいです。日本人の必修科目とするべきです。