第9回小田原・足柄を主題にした学生の卒業論文に学ぶ会

2月26日、開成町民センターで「小田原・足柄を主題にした学生の卒業論文に学ぶ会」が開かれました。9回目です。継続していることに敬意を表します。

私は発表の進行役を務めました。東京農業大学から2テーマ、東京電機大学から1テーマの計3テーマの発表でした。いずれも優れた内容で非常に参考になりました。

東京農業大学地球環境科学部の諸橋弘樹さんは、注目のドローンを活用した松田城址の再現に関する研究でした。すぐにまちづくりに応用できる内容でした。

松田城は、平安時代末期に建てられたと言われる山城です。山中で発掘するのは難しいですがドローンを使えば空の上から一望し写真測量が出来ます。

三次元化することで立体的な地形の再現ができることが強みです。近くを東名高速道路が通っている場所ですので城址の一部が拡幅工事でかけていますが再現できました。

山に眠っている古い遺跡を最先端技術を活用して再現することで郷土の歴史への関心を呼び起こすきっかけになります。松田町役場の担当課長も発表を聴き感心してました。

東京農業大学生産環境工学科の大西隆友さんは、神奈川県により絶滅危惧種に指定されている通称「小田原めだか」の生息環境に関する研究発表でした。

小田原市は荻窪用水と言われる用水の一部に「めだかの学校」というメダカの保護地域を設けて小田原メダカを守る自然環境政策を続けています。

大西さんは、「めだかの学校」エリアを含めて5ヶ所の測定地点を設けて水の流れの速さや水質を7月から9月の5回に渡って調査を実施しました。

「めだかの学校」エリア以外で流れが速くてめだかの生息に適さないことがわかりました。1秒当たり5ミリから1センチのゆるやかな流れでないと生きていけません。

「めだかの学校」は緩やかな流れを人工的に造ることで小田原めだかを守っていることになります。大西さんは4月から小田原市の職員だということでした。

東京電機大学建築・都市環境学系専攻の岡崎翼さんと小暮地畝さんは酒匂川の霞堤(かすみてい)の役割と地域防災に関する研究の発表でした。

2010年9月の酒匂川上流部での日量500ミリを超す集中豪雨によって河川敷のスポーツ公園などは全滅し霞堤内の遊水地も満水になりました。

この集中豪雨の際に霞堤と呼ばれる二重堤防がなく遊水地としての効果が発揮できなかった場合どうなったのか、またそれ以上の集中豪雨が襲った場合を分析しました。

分析結果の動画が映し出され解説が加わります。会場全体の眼差しが真剣になりました。2010年9月の集中豪雨の1・3倍、1.7倍それぞれ分析しました。

小田原市内に入った2ヶ所で酒匂川は氾濫します。1・7倍のケースでは、更に1ヶ所、酒匂川の左岸側でも氾濫し広範囲にわたり洪水が発生します。

更に日量1317ミリという日本でこれまで切ろうされた最大雨量が降り注いだ場合どうなるかも計算し映像化しました。6ヶ所で洪水が発生し平野全体はほぼ洪水になります。

発表を聞いていて暗たんたる気持ちになりました。しかし手を拱くことなく少しでも被害を小さく食い止めるための方策を地域全体で考える必要性を痛感しました。