神奈川新聞の社説に異議あり!

9月2日付の神奈川新聞の社説の見出しに目を奪われました。「努力する自治体を支援を」となってました。

「交付税という『ぬるま湯』につかったままの自治体も少なくない。」と書かれていました。

どこの地域のどういう自治体が「ぬるま湯」につかったままなのか具体的事例は一切触れていません。

実態をきちんと調査してこのような表現を使ったのではなく一般論として奸悪的に記述した疑いが濃厚です。

論説を書いた記者が実態を把握して記事を書いているのならば具体例を挙げるのは常識だからです。

ひどく誤解を生む表現です。編集会議を経て記事となるのでしょうがこのような表現を許すのが理解できません。

一般の方には私のがここまで述べていることが何を言いたいのかちんぷんかんぷんだと思います。

地方交付税交付金制度が国と地方自治体の財政に精通している実務者でないとほとんど知らない制度だからです。

自治体の財政を運営するにあたり地方自治体を担当する国の役所である総務省は財政の見込みを計算します。

自治体運営に最低限必要な需要額を計算し、その当該自治体の収入額も計算します。

それぞれ「基準財政需要額」、「基準財政収入額」といいます。基本となる入りと出の見積もりです。

入りと出を比較して不足する地方自治体には交付金が補てんされます。全ての自治体で平均的行財政運営を可能にします。

交付金の財源は、所得税、酒税の32%、法人税の34%、消費税の29.5%などとなってます。

各地方自治体には立地条件に大きな格差があります。各自治体の収入だけでは行政は成立しない地域が多いです。

税収の偏在を調整し財源を保証する制度です。日本全体の安定的な行政運営には、いまなお有効です。

神奈川新聞の論説は、地方交付税の補てんがないと運営できない自治体を努力していないと見なしかねません。

地方交付税の補てんなしに運営できる自治体は、社説に書いているように1687自治体のうち78に過ぎません。

都道府県レベルで見れば自主財源で運営できるのは東京都ただひとつです。日本の自治体の財政状況はいびつです。

補てんがないとにっちもさっちもいかない自治体が多いのです。その現実を無視するような表現はいただけません。

首都近郊で豊かな自治体が多い神奈川県においても急激な人口減少で過疎地域指定を受けた真鶴町があります。

90パーセントが山林に覆われ横浜や川崎の水源地域となっている山北町も存在します。

三浦半島地域では三浦市は人口減少が進み、産業基盤も乏しく自主財源の確保に苦しんでます。

いずれも交付税の補てんによって行財政を成立させています。しかし努力していないわけではありません。

5月に調査に訪れた三浦市の行政改革による歳出の切りつめは徹底していて「ぬるま湯」につかっていません。

神奈川新聞の社説は豊かな税収を誇る大都市の立場に立って書かれたものだと言わざるを得ません。

こうした視点からの言説は格差の拡大を解消しません。社説に異議ありと言いたいです。