新型コロナウィルス対応の政治学95~尾身の乱~

新型コロナ分科会の尾身会長が東京オリパラ開催に異議申し立てしました。国会での発言だけに重いです。

「パンデミックでやるのは普通ではないです。」と断言した報道に接した時、ある事件を思い出しました。

2015年6月衆議院憲法審査会で当時焦点となっていた安全保障関連法について参考人質疑がありました。

自公両党が推薦した憲法学者も含めて安保法は憲法違反だと断言したのです。衝撃を与えました。

読売新聞の直近のNHK世論調査では東京オリパラ開催に否定的な意見はおよそ半数で世論は二分されてます。

尾身会長の意見の方を正論として是認する国民が少なくとも半数はいることを意味します。火消しは容易ではありません。

それにしても尾身会長は突如として思い切った政治的発言をしたものだと驚きました。

尾身会長のキャリアを調べてみるともともと持ち合わせていた性向かもしれないと思うようになりました。

尾身会長は、厚労省がWHO=世界保健機関の事務局長に担ぎ出そうと運動した人物だということです。

結果的には選挙で敗れてしまい上手く行きませんでした。その後母校の自治医科大学の学長選挙に立候補した経験もあります。

この時も敗れたとのことですが尾身会長は純粋な研究者という顔のほかに別の顔を持っていることは間違いありません。

国会の場で東京オリパラに否定的な意見を述べた場合にどんなハレーションが起きるかは承知の上でしょう。

尾身会長は菅総理が東京オリパラを断行することを前提にして専門家として意見を述べると明言しました。

人流を押さえることにこだわっていることから開催する場合は無観客が望ましいとすることが予想されます。

政府に高いハードルを突きつける格好です。尾身発言は、いわば尾身の乱と形容して良いです。

菅総理の処し方が注目です。まず9日の党首討論で野党側の追及にどう答えるかです。

立憲民主党などは尾身発言を引用して東京オリパラの開催断念を迫ってくることは確実です。

何のための東京オリパラか、どうすれば安全安心な大会となるのか具体的に根拠を持って反論しなくてはなりません。

「新型コロナの感染を抑えて安全安心な大会を開催する。」との常套句はもはや通用しません。

もん切り答弁をするようだと東京オリパラへの反発が更に強まり開催を目指す政府の逆風になります。

野党に内閣不信任案提出の口実を与えます。否決すれば終わりですが都議選を前に政府・与党のイメージは悪化します。

今週は党首討論に続き11日からイギリスでG7 サミットがあります。菅政権の行方を左右する1週間です。

 

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