新型コロナウィルス対応の政治学99~伝わらない総理会見~
明治維新の幕府側の立役者、勝海舟は技巧の要諦を問われて「誠心誠意」と答えました。
権謀術数渦巻く国際政治の経験が乏しい当時の日本にとって誠実さは徳目ではなく武器であったのです。
相手側の計算高さに対抗するのではなく誠実さという異次元の構えで物事を処そうとした気高さにしびれます。
一歩間違えばお人よしのおバカさんと嘲笑される危険性があります。しかし勝海舟には意に介さぬ肚がありました。
真心を持って相手に立ち向かえばその意は伝わり相手の計算を越えた対応を引き出すとの確信があったに違いありません。
菅総理が東京への4度目の緊急事態宣言発出に関連して記者会見を行いました。意が伝わりません。
勝海舟の外交術の論に従えば菅総理には誠心誠意さがなく聞く者の心に響かないということになります。
なぜ誠心誠意さがないと思うのかというとざっくり会見の7割ほどが一生懸命やっているという説明です。
言い方を変えると言い訳です。頑張っていてほぼ順調なのだけれども上手くいかない部分もあるというトーンです。
緊急事態を発せざるを得ない状況でオリンピックは首都圏は無観客にまで追い込まれていて順調はあり得ません。
度重なる過ちを積み重ねて今日の結果を招来したことは国民誰しも感じていることです。
頼みのワクチンもここにきて予定通りの配送ができずに自治体の中で予約取り消しが出ています。
鳴り物入りでアピールした大規模接種や職域接種も予定変更を余儀なくされている事例が出ています。
こうした事態に謙虚に向かい合うのであれば足らざる部分があることを率直に認める方が先だと思います。
政府の予想が外れたことを政治にに詫びる姿勢があれば菅総理の誠心誠意さが国民に伝わります。
会見の中からはそのような誠実さは残念ながら感じ取れませんでした。一生懸命やっているの方が優先でした。
これでは緊急事態で国民に迷惑をかけているといくら詫びても表面的に頭を下げているとしか映りません。
新型コロナをめぐる総理会見がこの先何度あるかはわかりませんが基本的姿勢は変わらないと見るべきでしょう。
菅総理の政治姿勢には政治責任を真正面から受け止めるのではなく常に逃げの要素が紛れ込みます。
無観客を決めるのは最終的には5者協議といった言い回しが典型です。誠心誠意さの欠如は逃げと密接不可分です。
闘争の舞台である政治においては誠心誠意さは責任を一手に引き受けるという気概があって初めて通用します。
その気概が乏しければ誠心誠意さは発揮しようがなく結果的に国民に伝わる言葉は発せられません。