科学技術立国に立ちはだかる研究風土の壁

かつて大学は象牙の塔と呼ばれ権威で人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していました。

昨今は大学改革も進み国民との間の敷居はかなり低くなってます。大学側でも積極的に情報発信してます。

東京大学も前向きに取り組んでいる大学のひとつです。最先端の研究をわかりやすく発信してます。

そんな機関のひとつに「カブリ数物連携宇宙研究機構」があります。名前に驚ろいてしまいそうです。

カブリ財団の寄付で立ち上がった数学と物理の壁を越えて宇宙創成の謎に挑む最先端研究機関です。

しかしこの研究機関が提供する講座はとてもわかりやすく話に引き込まれてしまいます。

わかりやすい講座のけん引役になっているのが研究機構立ち上げの立役者の村山斉さんです。

「宇宙は何でできているのか」という幻冬舎新書の著者です。この新書はベストセラーになりました。

村山さんがNHKBSプレミアムの「最後の講義」という番組に出演していたので視聴しました。

この番組は人生最後だとしたら何を伝えたいかというテーマ設定で識者らが講義する番組です。

村山さんは好奇心を持ち続けることを強調してました。村山さんの人生の歩みに裏打ちされた発言でした。

村山さんは決して順風満帆の研究者人生を歩んでません。東大大学院では博士論文通るかどうか瀬戸際でした。

村山さんはここで一念発起してアメリカのカリフォルニア大学バークレイ校へと研究の場を移しました。

競争は激しいものの自由闊達な研究の場の雰囲気になじみ持ち合わせていた才能を開花させました。

世界的な研究者となると東大の方から招請がやってきました。そこで立ち上げたのが冒頭に述べた研究機構です。

日本の研究者の世界で良くあるパターンです。日本の研究風土ですと才能が潰されてしまいます。

そこで海外に新天地を求めて花開くと今度は海外の成果を高く評価する日本の研究機関が三顧の礼で迎えるのです。

日本国内ではオリジナルで自由な研究が認められにくい一方で海外で箔がつくと評価が一変するのです。

自然科学の世界だけでなくあらゆる科学の世界で今なお根強く残っている日本の研究風土に思えます。

明治維新以降欧米の先進科学を取り入れて追い付け追い越せの研究態度が染み込んでいて脱却できないのだと思います。

村山さんが憧れたアメリカ風の自由な研究風土の構築は明治維新から150年以上たっても大きな課題となってます。

第一線の科学者から日本の科学技術研究の衰退に対する警告が発せられてます。主に研究費の削減に対してです。

村山さんの講義を視聴すると単にカネの問題だけでなく研究風土の体質改善も急務だと思わざるを得ません。

 

 

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