砂上の国家~対ソ戦挺身大隊長露木甚造の証言~

朝日新聞大阪本社の記者の方が2日私の自宅に取材に見えました。私の父の話を聞きたいというのが要件でした。

朝日新聞では現在の中国東北部に大日本帝国が樹立したかいらい国家「満洲」についての連載を始めてます。

タイトルは「砂上の国家」となってます。概要はインターネットで見ることができます。

アドレスは次の通りです。https://www.asahi.com/special/manchukuo-spying/

日本と旧ソビエトが旧満州とモンゴル国境周辺で激突したノモンハン事件が1939年に発生してます。

日本軍はソビエト軍の新型戦車などの圧倒的な戦力の前に多大の被害を出したことで知られています。

この軍事衝突研究の第一人者がアメリカの故アルビン・クックス博士で日ソ間の衝突の詳細な研究を行ってます。

この研究過程で1960年代初めに満洲に駐留していた旧関東軍の将校たちに178時間に及ぶインタビューを実施しました。

その中のひとりが私の父親の露木甚造でした。4時間にわたってクックス博士の質問に応えているというのです。

侵攻の2か月余り前満洲との国境近くのソビエトの視兵が女性から男性に代わったことを証言しているとのことです。

テープは南カリフォルニア大学の東アジア図書館に保存されていて、この資料に基づき取材を続けています。

記者の方は父から満州国境での戦闘をはじめ戦争に関わる出来事についてどんな話を聞いたかを尋ねました。

4点話しました。まずひとつ目は旧ソビエト軍との戦闘がいかに激烈であったか耳にタコができるほど聞かされたことです。

若い兵士が爆弾を背負ってソビエトの新型戦車の下に潜り込み爆弾を仕掛けて爆発させる捨て身の戦法でした。

ふたつめは戦争で死ぬために生まれてきたような勇猛な戦士たちに対し自責の念を持っていたということです。

父の死後私は父の思いを現実にするため菩提寺に慰霊塔を建立し盆と正月、春と秋のお彼岸時に参拝してます。

三つめはソビエトの共産主義体制に対する強烈な反発の意識です。断じて許さないという姿勢でした。

四つめは中国大陸で旧日本軍が何をしたかについてはほとんど語らなかったことです。

大陸での侵略行為について将校が全く知らないはずはないと思いうのですが語りませんでした。

戦後生まれ故郷の町長に就任したことについても聞かれました。旧満州の都市計画の影響を受けていると答えました。

小さな平坦な町全域を都市計画区域に指定したまちづくり手法は大陸での体験の影響があると見てます。

朝日新聞では父の証言に基づいて一回特集を組むとのことです。どんな内容になるか楽しみです。