酒匂川の新たな治水方針への期待と懸念

21日付の神奈川新聞が一面で県が管理する2級河川を流域全体で総合的に管理する方針に転じたと報じていました。

「総合治水」あるいは「流域治水」と呼ばれる考え方です。上流から下流までひとつのものとして捉える発想です。

方向性は全く正しいです。近年の記録的集中豪雨頻発時代に対応するため待ったなしの方針転換です。

平時の水系管理や基盤整備事業、緊急時のダムの放流や住民の避難まで県も市町村も一体で当たることは意義あります。

ただし注意点もあります。神奈川県西部を流れる酒匂川は水源地域の多くは静岡県側にあります。

流域治水という言う以上は静岡県側とも入念な連携が平時から行われていなかければなりません。

県境を越えれば知らぬ存ぜぬというのが実態でした。2010年9月の水害以降改められました。

今度の方針転換で神奈川、静岡両県の連携強化はさらに重要性が増し具体の施策が問われます。

もうひとつ流域の市町が注意しなければならないのは流域治水の名のもとに県の負担の軽減を図る動きです。

県が果たすべき役割を市町村に委ね県の業務を簡素化する方向は断固避けなければなりません。

総合調整は県の任務です。この役割を中心都市の小田原市に押し付けるようなことがあれば混乱します。

市町の緊密な連携は言うは易く行うは難しです。小田原市が担えば小田原優先の対応にならざるを得ません。

他市町村がかやの外に置かれるようなことがあれば取り返しのつかない事態を招く危険性があります。

神奈川県西部の医療体制に関連し県立足柄上病院と小田原市立病院の連携を謳い文句に上病院の産科を廃止しました。

悪しき前例があるのです。「連携強化」を額面通り受け取ると馬鹿を見るのは市町側です。

県西地域の首長はアメリカに対する日本と同じで県に対して従順です。言うべきことを言いませんので不安が残ります。

流域治水を行うにあたり基盤整備が不可欠です。県の財政力に強い不安が残ります。

国の積極的支援が無ければ何一つ本格的事業は遂行できません。国をいかに巻き込むかが勝負です。

国に着目してもらいたい事業に非常時に遊水地の役割を果たす「かすみ堤」の強化があります。

堤防が人工的に切れていて切れ口から洪水時に水が逆流する仕掛けです。戦国武将の武田信玄の発案とされます。

流域全体の保水力を強化するための有力手段です。酒匂川にはかすみ堤が3か所残ってます。

市町と県と国が連携すれば酒匂川のかすみ堤の回収強化を流域治水の基盤整備事業の目玉とすることが可能です。

かすみ堤が残っている小田原市と開成町に期待します。他市町や県、国に積極的に働きかけて欲しいです。