「従軍慰安婦」問題は事実に基づいて論議すべき

菅内閣が4月に『従軍慰安婦』という表現は適切ではないとの答弁書を閣議決定しました。

これを受けて教科書各社では表現の訂正申請が文科省に出されたと報じられています。

神奈川新聞が今月6日、7日に上記の問題について特集を組み批判的立場の研究者の意見を掲載しています。

歴史的実態を無視していいる上閣議決定による政治の教育への介入だとして反発してました。

閣議決定に賛同する意見の掲載はありませんでした。神奈川新聞社の立場を反映していると思いました。

従軍慰安婦問題を論じる際に基本となるのは1993年8月4日に出された河野官房長官談話です。

日本軍の関与のもとに本人たちの意思に反して集められた慰安婦が数多く存在したことを認めています。

ただ談話の中では従軍慰安婦という言葉の前に「いわゆる」と付けられています。ここがあいまいさのもとです。

強制性が認められて軍の管理下に置かれていたのならば「従軍慰安婦」とすればよかったのです。

そうならなかったのは資料的な裏付けが不足していたからではないかとの疑念を生んでしまいます。

2007年3月16日に当時の安倍総理大臣はいわゆる強制連行を直接指示する記述は資料になかったとの答弁書を提出してます。

こうした疑いを決定的にしたのが朝日新聞の従軍慰安婦問題に関する大誤報でした。

日本統治下にあった済州島において慰安婦を強制的に連行して集めたという虚偽の証言者がいました。

朝日新聞はこの証言に基づいた記事を1982年9月2日に掲載し2014年12月23日に事実誤認を認め訂正しました。

天下の朝日の調査報道の信頼は大きく揺らぎました。同時に慰安婦問題が虚偽の事実だったとの印象を与えました。

済州島における朝日新聞の報道は誤りでしたが中国や東南アジアでも慰安婦問題はありました。

河野談話が正しかったどうかその根拠を探求し政府としての公式の見解を本来ならば出すべきでした。

河野談話は継承するとしながら強制の根拠はなく従軍慰安婦という表現は正しくないという姿勢は矛盾してます。

事実に基づいた学術的検討から離れてしまいイデオロギーの立場からの議論になってしまっているのは残念です。

従軍慰安婦という表現が適当なのかそれとも慰安婦なのか誰もが納得できる根拠に基づいて明確にすべきです。

根拠なしになし崩し的な修正は禍根を残します。河野談話とのかい離が広がる一方だからです。

根拠があり慰安婦とするのならば文句はありません。根拠が明確に示されないから論議を呼んでしまうのです。

河野談話から28年が過ぎました。あいまいな部分を明確化する作業を政府は逃げずに行うべきだと思います。