細野豪志さんの個の力
私が第一線の政治記者だったころ脚光を浴びていた政治家たちに次々と引導が渡された衆院選でした。
小沢一郎さんと中村喜四郎さんが小選挙区で落選、比例代表でなんとかバッジを守りました。野田毅さんは落選です。
小沢さんと中村さんは小選挙区で勝たなければ代議士でないという信念の持ち主だったはずです。
そのふたりが比例で救われる事態になったということは政治家としての潮時が到来しました。
次の出馬はあり得ません。特に小沢さんは小選挙区至上主義だったはずですから信条を守って欲しいです。
小沢さんが旧民主党でらつ腕を振るっていたころ高く評価していた若き政治家がいました。
静岡5区の細野豪志さんです。評価の基準は小選挙区で勝ちぬく選挙の強さでした。
細野さんが女性スキャンダルで叩かれて苦境に陥っていた時も小沢さんは一貫して目をかけてました。
細野さんはこうした逆境に耐え抜いて政治的な基盤を作って小選挙区の連勝を続けていました。
民主党のプリンスは小池百合子都知事とともに希望の党の結成に関わりその後一転して自民党への入党へと動きました。
幹事長だった二階俊博さんが救いの手を差しのべて二階派の特別会員という位置づけです。
小沢さんと二階さんはかつての盟友関係にあり両氏ともに細野さんを評価するところに奇妙な一致点があります。
二階さんは菅総理から幹事長を切られる直前選挙の顔なんてどうでも良くて自分が選挙をするんだと述べてました。
菅総理では選挙が戦えないという若手の声に対し甘ったれるなと一喝したと受け止められる発言でした。
親分がスキャンダルに巻き込まれてもバッジを失わなかった長老政治家の凄味を感じたものです。
しかし幹事長職を奪われてからの二階派は哀れです。代表代行の河村健夫さんは公認争いに敗れ引退しました。
二階さんに救われた細野さんも断崖絶壁に立たされたと誰もが思いました。私も天罰が下ると見ました。
ところが細野さんは12万7千票余りを得て自民立民の公認候補にダブルスコア以上の差をつけました。
ふたりの力量不足だけでは説明しきれません。細野さんが培った底力には驚嘆しました。
自民でも立民でもない何かの受け皿を有権者は求めていました。細野さんはぴたりとはまりました。
維新が大躍進を遂げた選挙結果と細野さんの驚異的得票は軌を一にしていると見ています。
今度の選挙は自民にそれなりのお灸をすえ立民には自民以上の手厳しい試練を与えました。
そうした中で細野さんが圧勝した意味は小選挙区で勝ちぬく個の力をおろそかにはできないとの教訓でした。