横浜市の神奈川県からの独立構想を考える
横浜市を始め全国に20ある政令指定都市と所属する道府県との関係は一概に芳しくありません。
唯一、府と政令市が良好な関係を保ち一体的な行政運営がなされているのが大阪府と大阪市です。
府知事と市長が維新の会に所属し大阪都構想に象徴されるように一体化を目指してきたのですから当然です。
戦前からの大都市のうち東京だけは戦時体制の強化のため東京市が廃止されて東京都体制になりました。
横浜、名古屋、大坂、京都、神戸の5大都市は府県からの独立を悲願としてきました。
妥協の産物として生まれたのが現行の政令指定都市制度です。道府県の8割程度の権能を有すとされてます。
大坂だけは先に述べた維新の会の提唱による大阪都構想の実現に挑戦しましたが住民投票で2度否決されました。
全国最大の基礎自治体である横浜市は大阪のような都構想ではなく特別自治市構想にこだわり続けています。
市域内の地方税収を全て徴収し財政的な自立度を上げることを柱に神奈川県からの独立を目指すものです。
県の人口900万人のうち380万人の人口を擁する横浜市に独立されたら行政は成り立たないと県は反論してます。
県知事に提出された審議会の報告書によればそもそも特別自治市構想が県民市民のためになるかと切り捨てています。
学者の言い回しにしては率直な物言いに驚きました。県知事はわが意を得たりとさぞかし喜んでいることでしょう。
県と横浜市による財源の奪い合いが特別自治市構想をめぐる問題の本質ではありません。了見が狭いです。
人口の三分の二が政令指定都市であるという全国で極めて異様な様相なのが神奈川県です。
県の権能の8割を有する政令市に県の主たる行政も重なっていて政令市に分厚い行政体制と言わざるを得ません。
横浜市からの問題提起をきっかけに神奈川県全体の県と市町村の関係を改めて考え直す契機と捉えて欲しいです。
方向性としては横浜市の自立度を上げて横浜市内における県行政の密度を下げるのは間違ってないと思います。
特に防災分野においては横浜市内に県庁や警察本部をはじめ主要な機関が集中している現状は改善が急務です。
県の防災関連部署だけでも横浜市から移転させて新たな広域行政の仕組みを考えるのは妥当な考え方です。
県は広域防災、土地規制や水資源管理、警察、医療など権能を絞り横浜市に権限と税財源を移譲しスリム化すべきです。
人口比例のため大都市偏重になっている県議会定数の在り方もタブー視することなく議論の俎上に上げる時期です。
県と横浜市の関係だけでなく神奈川県全体の行政体制のあり方を根本から議論し直す時期だと思います。