実践者の記録を読んで本物の政治を学ぶ
二宮尊徳は、江戸時代末期600に上る農村の再興を果たしたとされる当時最高峰のまちづくり実践者でした。
二宮尊徳にはまちづくりの理論を著した著書はなく仕法と呼ばれる実践の記録が残されています。
1856年10月70歳の生涯を閉じました。死ぬ前年の大晦日の日記に遺言を書き残してます。
「私の書簡を見よ、私の日記を見よ」と書かれてました。実践は理論からは学べないのです。
手紙や日記の言葉の行間を読み取り、実践の手法を学び取って欲しいと弟子たちに語りかけたのだと思います。
生涯を農村再興に賭けた二宮尊徳らしい最期の言葉だと思います。尊徳の自負がひしひしと伝わってきます。
政治の世界も実践の世界です。理屈を語るだけでは何もしていないのと同じことです。
やってなんぼです。政治学の書物をいくら読み込んでも政治の実践の現場では役に立ちません。
政治学の書物はいわば死んだ言葉を書き連ねているだけで政治家の情念は伝えられません。
政治の舞台の底流に流れるのは個々の政治家の熱い思いであり憤激であり嫉妬であると言って良いです。
こうした政治の情念を語る記録に触れない限り本当の意味で政治を学ぶことはできません。
第一級の実践的な政治家の記録に触れるのがいちばんです。例えば江戸城無血開城の立役者の勝海舟です。
勝海舟の座談や語録からは古い時代の日本の偉人から始まり幕末維新期の政治家が数多く登場します。
闊達な人物評価が魅力的です。西郷隆盛の評価が高いです。大きく叩けば大きく響き小さく叩けば小さく響くと語ってます。
激烈な歴史を共に創り上げたからこそわかる西郷隆盛の泰然自若とした人間性を巧みな表現で表しています。
現代政治においても格好のガイドブックが出版されました。政界の暴れん坊亀井静香さんの『永田町動物園』です。
週刊現代に連載された政治家批評を一冊にまとめたものです。秘話満載で存分に楽しめます。
総勢101人の政治家の人物月旦です。激動の政治をくぐり抜けた亀井さんご自身の政界日誌でもあります。
自民党から野党まで人脈の幅広さには驚きます。最初が安倍晋三元総理、最後が小沢一郎さんです。
亀井さんにとっては安倍さんは今でも弟分に見えるようです。小沢さんの自民党打倒への執念はまだ続いているといいます。
菅前総理について「冴えない男」だったと初当選の頃の印象を述べてます。笑顔が無く暗かったとも書いてます。
私が薫陶を受けた梶山静六さんや野中広務めるさんについて梶山さんは悲運の人、野中さんは偉大な裏方と評してます。
読み終えてこの本は政治塾の教科書になると思いました。本気で開校しようかと思ってます。