真鶴町、松本町長の誠実さが混迷打開のカギ
神奈川新聞が選んだ2021年神奈川県の10大ニュースの第6位は真鶴町をめぐる地域政治でした。
真鶴町は神奈川県唯一の過疎地域です。決して不便ではありません。東海道本線の駅があります。
美しい真鶴半島に海の幸。地域資源も豊富です。それなのに人口の急減はにわかに理解できません。
私は漁師町にありがちな気性の激しさからくる政争の存在が打つべき手を遅らせたと見ています。
2020年9月の町長選挙で新人の松本一彦さんが1200票差で現職だった宇賀一章さんに圧勝しました。
政争を乗り越えて新しい力で真鶴町を再生して欲しいとの期待感が松本さんを押し上げたと思います。
しかしその松本さんがとんでもない不祥事をしていたことが明るみに出ました。有権者名簿の持ち出しです。
職員時代にコピーして持ち出し町長選挙に利用していたというのです。近しい町議にも提供していました。
許されない行為であることは自明のことです。松本さんは昨年11月町長職を辞しました。
松本さんは有権者に対しお詫び行脚し根強い支持が残っていることを踏まえ町長選挙出馬に踏み切りました。
先月19日に投開票が行われた選挙では松本さんと元町長の宇賀一章さんが大接戦で松本さんが競り勝ちました。
松本さんが出馬できたことだけでも奇跡的ですし勝利したとなると奇跡そのものといえます。
奇跡というとあり得ないことと一般的には解釈されます。しかし表面化しない真実が明るみに出たとも捉えられます。
大逆風の中で松本さんが勝利したのは真鶴町の有権者の間で改革に流れを止めないで欲しいとの願望があったと見るべきです。
元の町政には戻して欲しくないという声の方が上回ったと捉えれば奇跡というよりは真実の反映と言えます。
松本町長は当選後公約に掲げた1年間の報酬ゼロを実現するため条例案を提出しましたが議会に否決されました。
松本町長がどのように受け止めているかは知る由もありませんが常識的に見て通りません。
議会としては松本町長の不正を追及しようとしている矢先に松本町長の主張を通すのはあり得ないからです。
振り上げたこぶしは簡単には降ろせません。幹部職員出身の松本町長は冷静に見ていると推測します。
松本町長の課題は町民の信頼回復です。議会から町民集会の要望が出てますので精力的にこなしていくと思います。
もうひとつは議会との関係の再構築です。こちらは議会と話し合える副町長を選任することが必要だと思います。
一定の町民の支持が背景にあるのですから誠実に対処していけば松本町政はいずれ安定していくと私は見ています。