”あしたのジョー”精神の復活の時

先日NHKBSプレミアムの「アナザーストーリー」で「あしたのジョー」を取り上げていました。

少年マガジン連載の「あしたのジョー」、中高生だった私の魂を激しく揺さぶったことを思い出しました。

貧困だが温かみのある家庭で育ったやんちゃな矢吹ジョーはボクシングに目覚めチャンピョンを目指していきます。

宿命のライバル力石徹との死闘は鬼気迫るものでした。力石が勝ちました。しかし力石に決定的ダメージを与えました。

苛酷な減量の影響が出て急死したのです。漫画の中の話しなのに実際に告別式が執り行われました。

力石との死闘後ジョーは目的を失い生きるしかばね状態に陥りました。しかし世界への挑戦がジョーの魂を呼び覚ました。

絶対王者ホセ・メンドーサとの一戦は力石との戦いを凌駕するものでした。人間レベルの戦いを超越してました。

そして迎えた最終ランド、またもやジョーは敗れました。コーナーの椅子に腰かけたジョーの姿は白く変化しました。

「燃え尽きたぜ、真っ白にな…」。髪の毛が真っ白になったジョーへかすかな笑みを遺し天上に召されたと思いました。

このラストシーンは忘れたくても忘れられません。この作品は私の人生観に少なからず影響を与えています。

ジョーのように勝ち負けを超越し何かに人生をかけて生きる生き方に強いあこがれを抱きました。

強大な敵にぶち当たる、敗れても立ち上がる、最期は人生を満足して終わりたいと考えました。

ジョーを追い求めた心の渇きは今も息づいています。困難に立ち向かっている人を前にすると無条件に応援したくなります。

連載が始まった頃は学生運動が燃え盛っていました。学生運動のリーダーたちがジョーに人生を重ねていたことを知りました。

東大全共闘のリーダーの山本義隆さんが「あしたのジョーになるんだ。」と書いていました。

山本さんにとっての敵は当時の政治体制でした。その強大な敵を破壊するために若き人生を賭けました。

その心の叫びが「ジョーになる」との言葉だと思いました。しかし山本さんらの運動は挫折しました。

際立って聡明な知性を持つ山本さんは著名予備校の人気講師としてその後の人生を生きました。

物理学史の学術書を著し高い評価を得ました。ジョーの精神は学生運動と名別世界に展開しました。

地球の存続自体が危ういとされる現代世界の中で日本は人口減少を始め様々な困難に直面しています。

いま想起すべきなのは「あしたのジョー」で描かれた精神ではないかと思えてなりません。

その精神とは、いかに困難な課題に直面しても乗り越えようと挑戦する気概だと言い換えることができます。