人新世時代と二宮尊徳
先にベストセラーとなっている『人新世の「資本論」』について感想を書きました。
繰り返しになりますが「人新世」とは人類の活動が極限まで達し地球温暖化を始め危機に直面している時代です。
若きマルクス研究者の斎藤幸平さんはマルクスの晩年の思想に解決策の手がかりを見い出しました。
コモンという共同体に光を当て直し成長を目指すのではなく共同体の持続を目的とすべきだというのです。
マルクスはドイツ人ですのでマルクスの言うところの共同体はゲルマン民族の共同体です。
マルクスの論をそのまま日本に当てはめることは歴史的経緯の違いから危険が伴うと指摘しました。
地球の危機を救う処方せんとして共同体回帰があるとしても日本は独自の共同体再興を検討する必要があります。
これ以上ない教材が二宮尊徳の農村再興策です。江戸時代末期苦難にあえいだ600もの農村を再興した実績があります。
今こそ二宮尊徳の農村再興策を再評価し、現代風にアレンジした処方せんの提示が必要です。
日本独自の現代の危機への処方せんであり世界に通用する「人新世」時代の共同体再興の手引きとなります。
二宮尊徳の農村再興策は机上の空論ではなく実践論であるところに最大の特徴があります。
リーダーの心構えから始まり財政の見通しを含めた長期計画の策定などそっくりそのまま現代に応用できます。
経済成長を目指したのではなく持続可能な農村をめざしたところも現代にマッチします。
異なるのは最先端のテクノロジーが当時はなかったことです。現代の強みですので活かせばよいのです。
二宮尊徳を古めかしい歴史的遺物としてみる見方を早急に卒業する必要があります。
色眼鏡を外しリアルに二宮尊徳の業績を見つめ直せば現代の危機を救う救世主であることがわかります。
日本の共同体の再興を考えるのですから外国の理論を無理やり当てはめたところでしっくりきません。
日本の伝統に根差したりろんのなかに手がかりを探し処方せんへと洗練させるのが本来です。
二宮尊徳流の共同体再興を考える場合、カギは市長村長です。地域のリーダーとしての役割が重大だからです。
二宮尊徳は晩年農村再興の最前線に立つ農村リーダーに大きな期待を寄せていたという研究成果があります。
農村リーダーは現代でいえば市町村長です。市町村長の働き具合で成否が決まります。
地球温暖化を始め数々の危機に直面している現代の危機を救うのは地域からでありそのリーダーたる市町村長です。
どのような市町村長を選ぶかは地域にとって決定的であるだけでなく日本全体更には地球のための選択です。