続・人新世時代と二宮尊徳

人類存続の危機に直面している人新世時代を克服する処方せんを提示しているのが二宮尊徳だと先に書きました。

封建時代の農村再興の実践者が何故に現代の危機を救うお手本なのだろうかと疑問を持たれる方も多いでしょう。

地球規模の危機ということは人類の生存の大前提である地球という共同体の危機です。

かつて宇宙船地球号という言葉がはやりました。地球環境の悪化が叫ばれ出した1970年代のことです。

地球を宇宙に浮かぶひとつの宇宙船と見なし内部の調和を図らない限り宇宙船はさ迷い宇宙のごみと化します。

調和を乱す元凶は行き過ぎた資本主義が根っこです。それに対抗しようとする強権独裁政治もそうです。

いがみ合いの構図から解決策を見いだすのは極めて困難です。現代の状況がまさにそうです。

危機のあまりの深刻さにたじろぎます。しかし手をこまねいている訳には行きません。

解決の手がかりをどうにかして見つけ出さなければなりません。そこに登場するのが二宮尊徳です。

現代の危機は地球の存続です。二宮尊徳の時代は江戸期の小さな農村の崩壊でした。

しかしともに共同体です。この共通項に重きを置いた時に現代の危機の解決への道筋が見えてきます。

二宮尊徳の行った共同体の再興策は共同体内のバランスを取り戻すことに他なりません。

富める者が再興の資金を供出しそれを原資に貧者に無利子で貸し付けるなどして自立を促します。

貧者は勤労に励み借入金を計画的に返済していきます。こうしたプロセスを通じて共同体はバランスを取り戻します。

共同体の自然環境と人間が手を入れる経済との調和が図られた状態だと言って良いです。

この発想を地球規模に拡大した姿を想像してみれば地球全体の再興策の手がかりになります。

ただし一気に地球というわけには行きません。二宮尊徳の生まれた日本で小さな実践を積み重ねることが現実的です。

実践を担うのは自らの行動が地球を救ことにつながるという高い志を持った市町村長です。

ひとりひとり取り組める範囲は地球から見れば微々たるものです。しかしちりも積もればです。

二宮尊徳の改革の手法を貫く積小為大(せきしょういだい)精神です。決しておろそかにはできません。

たとえ小さくても面的に共同体のバランスを取り戻す挑戦が日本という共同体の調和へと深化します。

二宮尊徳手法の共同体再興戦略は世界中で応用することができることが強みです。

その国に合ったやり方で地域のリーダーが共同体の再興の実践を展開すればよいからです。

地球の様々な地域で二宮尊徳による共同体の再興の実践が花開けば宇宙船地球号は元気を取り戻します。