ウクライナ・ゼレンスキー大統領の警告
ウクライナのゼレンスキー大統領が巧みな弁舌を通じて西側各国に支援を求めています。
日本ではロシアによる原発攻撃を冒頭で非難しました。核に対して敏感な日本の世論を踏まえたのだと思います。
ロシアによる侵略の「津波」を食い止めなければならないと述べました。3・11を意識した表現です。
日本文化にも言及しウクライナ人との親和性を強調していました。味がある演説でした。
寸鉄くぎを刺す発言もあります。ドイツ連邦議会での演説はドイツの対ロシア外交に異議を唱えました。
経済重視外交がロシアを太らせてしまいウクライナへの軍事侵攻へとつながったと指摘しました。
ロシアという国の危険性は再三にわたって指摘したのにドイツは耳を貸さなかったと手厳しかったです。
私は『21世紀のエネルギー地政学』という本を必死で読み返しています。2007年に出版された本です。
著者は、当時日本エネルギー経済研究所の専務理事だった十市勉さんという方です。
国家がどう振る舞うかは経済発展の基盤となるエネルギー戦略によって決まるとして冷徹な視点で先を読んでます。
ロシアの強みは石油と天然ガスのエネルギー産出国であることです。この強みをプーチン大統領は存分に使いました。
ドイツはロシアとの密接な関係を築きロシアからの天然ガスの供給ルートの確保に集中しました。
強権国家のロシアと手を組むことは安全保障面でのリスクと裏腹でしたが経済を優先したのです。
ロシアはやはり牙をむきました。ドイツはこれまでのエネルギー確保戦略が水泡に帰そうとしています。
ロシアを中国に、ドイツを日本に置き換えてみれば我が国も決して他人ごとではありません。
中国という国の強権的な本質に目をつぶり経済分野のメリットを求めているとしっぺ返しを食らいかねません。
西側の民主主義国の常識は独裁国家には全く通用しません。甘い考えは命取りになります。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻はこの冷酷な現実をまざまざと示してくれました。
日本として胸に刻み込み今後の国家戦略を考える必要があることは言わずもがなです。
ロシアに限らずエネルギー供給国は政情が不安定で独裁的な傾向をはらんでいるだけに厄介です。
エネルギーの一大輸入国となった中国がカネに任せてエネルギー確保にまい進しています。
強権エネルギー輸出国のロシアと強権消費国の中国が強固な同盟を結んだとしたら世界の脅威です。
アメリカを中核とする西側に軸足を置いた日本はこの一大リスクから目を逸らすことはできません。
エネルギーや食糧を確保しつつ日本の安全をどう守るか根っこからの再検討が喫緊の課題となりました。