ふるさと喪失のシミュレーション
先月30日富士山ハザードマップの改定を受けて避難計画の中間報告が発表されました。
ハザードマップの改定は最新の調査結果を踏まえ溶岩流の到達範囲が大幅に拡大されたことが特徴です。
神奈川県にも溶岩流が及ぶ可能性があり私の住む開成町は全域溶岩流に埋まるケースが想定されてます。
これまでは1707年の富士山宝永火山爆発のケースに倣い火山灰や砂による被害を考えてきました。
火山灰や砂も大変な被害をもたらしますが溶岩流となると被害の様相が全く異なります。
灰や砂は除去可能です。溶岩流となると富士山の青木ヶ原樹海や浅間山の鬼押し出しのように手が付けられません。
わが町全域を捨て去らなければならないかと思うと切ない思いがこみ上げてきます。
3・11の原発事故で帰宅困難区域に指定された地域の住民の故郷を失った気持ちのごく一端を感じ取れます。
放射能は目に見えない恐怖で近づけませんが溶岩流はそこまでの危険はありません。
私の地域にまで押し寄せるのに5日と8時間後とされています。逃げる余裕はあります。
問題はどこに逃げるかです。静岡県と接し溶岩流が33時間後に押し寄せる山北町は遠隔地への避難を計画してます。
茨城県の境町と相互援助協定を結び大災害時に住民の避難場所を確保することとしています。
山北町の人口は9700人ほどです。全員ではないにしても長距離避難は困難極まりない作戦です。
全てが平たんで溶岩流に飲み込まれるケースがあり得る開成町は逃げ場所がないだけにさらに深刻です。
山北町のように遠隔地の自治体と協定を結び避難計画を策定するかどうか検討せざるを得ません。
歴史に学ぶと宝永噴火の際は隣接する南足柄市の丘陵地帯に逃げ込み長期間難を逃れました。
但しこの時は現在の町域の一部が噴火後の洪水に見舞われ当該地域の住民が逃げたものです。
避難民の数も少なく洪水ですのでいずれ水は引き戻れる可能性がありますのでできたことです。
今度の溶岩流の想定のように町内全域が溶岩流に覆われるとなると隣市への避難だけでは対処できません。
南足柄市も避難民が発生しますので開成町の住民を受け入れる余裕はないはずです。
暗たんたる気持ちになります。まず起こりえないケースだと背を向けたくなります。
3・11で住民避難が継続している地域があります。実情を詳細に検証することから始めるしかありません。
基本は補完性の原理です。まずは地域独自で、それが無理ならば広域的対応、最後は国のサポートです。
ふるさと喪失の避難計画づくりは気が進みませんが最悪に備えるのは行政の役目です。しっかり取り組んで欲しいです。