科学と住民をつなぐ防災語り部の重要性

気象庁の記者会見で登場する担当者の皆さんは気象観測の現場で働くバリバリの科学者です。

観測や分析のプロであっても話すのは苦手なようです。専門の広報官の育成が必要だと常々感じてます。

24日小田原市にある県立生命の星地球博物館で富士山噴火の防災講演会が開催されました。

講師は県立の温泉地学研究所の萬年一剛(かずたか)さんでした。火山の専門家です。

およそ90分話を伺いましたが火山防災を素人にわかりやすく伝える翻訳者としての能力に驚きました。

第一線の研究者ですので最新の科学的知見は当然十二分に持ち合わせています。

問題はその知見がどのような意味を持つのかまたどう対処すべきなのかを伝えることです。

とかく大御所の専門家の方々は科学的研究の結果が出ているのだから対応すべきだと言います。

しかし行政や一般住民にとっていきなりデータを突きつけられても対応できる訳がありません。

昨年3月富士山ハザードマップが改訂されて溶岩流の予測が大きく異なりました。

最悪の場合私の住む開成町のある神奈川県西部地域まで流れ込むという発表でした。

溶岩流が流れた歴史的な事実はこれまでないため衝撃をもって受け止められました。

このため富士山噴火というと溶岩流が主要な災害であるとの誤解が生じてしまいました。

萬年さんは溶岩流が神奈川県西部の足柄平野まで達する可能性は極めてレアケースであると説明しました。

69の想定する噴火口のうちの4つで最大規模の溶岩流型の噴火が起きた場合ということでした。

河川に流れ込み水で溶岩が冷やされて動きが遅れることは想定に入れていないということです。

ただしいったん溶岩流に覆われてしまうとそこから再生を果たした都市は歴史的にはないということです。

溶岩流対策とは到達するまで時間的余裕があるので命を守るために逃げることが第一です。

広域避難、その延長線上に移住が現実問題として浮かび上がってきます。

萬年さんが溶岩流以上に対策の必要性を強調していたのは噴火による灰や砂の対策です。

火山噴火と言えば桜島ですが年間1センチにももたない量であれだけ被害が出ます。

数十センチも積もった場合の実際の被害は計り知れないのです。神奈川東京千葉にも及びます。

交通機関はマヒ、富士山の近接地域は逃げる以外に手はありません。

どのような対策をとるのか全く道半ばです。溶岩流への対応と合わせてこれからです。

常に住民への情報提供が不可欠です。専門的知見の翻訳者を確保する必要があります。

萬年さんには専門的な難しい話を分かりやすく翻訳して住民に伝える役割も期待します。