関東大震災100年に向けて

28日足柄の歴史再発見クラブの講演会がありました。自然災害伝承碑についてでした。

発表者は会員で元筑波大学教授の西本晴男さんです。西本さんは土砂災害の専門家です。

神奈川県西部地域の関東大震災の記録を刻んだ32か所の石碑を調査した結果を報告しました。

西本さんが用意した資料に著名な地震学者で随筆家の寺田寅彦の言葉が紹介されていました。

1933年5月に書かれた「津浪と人間」という文章です。人間の心理を表現していました。

寺田寅彦は人間の法則のひとつに「忘れっぽさ」があると分析してます。

「3日で飽き、3年で忘れ、30年で組織として記憶が減り、300年でなかったことになる」

背景には「見たくないものは見なくなる」という心理が働くことがあると見ています。

良く言われる「正常性バイアス」です。非正常なことにはベールを被せがちです。

そこを突破するひとつの道具が石碑です。石に刻めば簡単には壊れません。

問題は忘れないようにする仕掛けが必要なことです。毎年の記念日が大切な理由です。

関東大震災クラスの大災害となると埋もれている石碑は相当数に上ると思います。

100周年という特別の記念日をきっかけに再発見する意義は大いにあります。

災害に対する思い込みから脱するためには足元を見つめ直すことが大切です。

特別の大きな被害があるとその地域だけが被害を受けたとつい考えてしまいます。

大災害ほど至るところに被害の傷跡は残っています。丹念に調査する必要があります。

西本さんの小田原市片浦地区の石碑報告を聞いて改めて強く感じました。

根府川地域で発生した土砂崩れで400人以上の被害者を出しました。

近くの米神(こめかみ)地域でも66人が犠牲になってます。こちらのほうは埋もれがちです。

ユニークな災害伝承碑もあります。秦野市の住宅地内の神社の由来説明板です。

住宅地内にあった神社のところで火災が鎮火したことで神社を再建した事例があります。

「火伏せの神」として畏敬の念が生まれ地域の守り神として根付いたということです。

講演会の参加者は20人ほどで小さな集まりでした。手作り感満載で雰囲気が良かったです。

書道家の方が題字を書いてくれ会の締めくくりは歌手の方の唱歌の披露でした。

参加者から開成町の古民家に大震災のいろは歌が残っているとの報告もありました。

隣町の大井町の前町長の間宮恒行さんも参加され大井町の記録文書の紹介を受けました。

関口康弘会長は100周年に合わせシンポジウムを開催しその後冊子も刊行する計画です。

クラブとして石碑は語ると考え大震災の自然伝承碑の探索に力を注ぎます。