「義」を忘れてしまったのか自民党

明治期の日本人が持つ倫理性を英文で紹介した新渡戸稲造の『武士道』。

徳目として最初に取り上げられたのは「義」です。掟の中で最も厳格な教訓だとしてます。

「義」とは何かと問い直すと定義は難しいです。キリスト教徒の新渡戸も悩んでます。

「義」の章の結びに「鋭敏にして正しき勇気感、敢為堅忍の精神」と記してます。

単なる正義を越えて行動せずにはいられない信条とでも言えば良いのでしょうか。

もっと易しく言えば不条理を目の前にして放置できない気持ちだと言えます。

だからこそ「義」を見てせざるは「勇」なきなりとなります。行動が求められます。

更にかみ砕けば時代劇の底流に流れている勧善懲悪の心情だと思います。

弱きを助け強きをくじく、そうした心持ちを持つのが「義」の人となります。

昨今の政治で「義」の精神を体現している政治家が少ないと誰しも感じていると思います。

目先の権力の維持や利益に汲々として「義」の人らしい行動をとる政治家がいないからです。

昨年10月の衆院選の公認争いで河村建夫元官房長官がはじかれ引退に追い込まれました。

林芳正外務大臣が参院から衆院山口3区に鞍替えしたため居場所がなくなったのです。

河村さんの親分は二階前幹事長です。幹事長職を失ったことが響きました。

派閥間の権力闘争と言ってしまえばそれまでですが騒動はこれで収まりませんでした。

河村元長官は秘書である息子のけんいちさんを後継候補として擁立しました。

当初は中国ブロックの比例代表と目されていたものの結果は北関東ブロックでした。

落選の憂き目にあいました。来月の参議院選挙で捲土重来を期してます。

全国比例です。高いハードルを課されました。溺れる者を叩いている感があります。

全国比例の選挙は広大過ぎて見当がつきません。自民党の当選ラインは15万票程度とされます。

どの候補も目標を20万票以上とし、しのぎを削っています。厳しい闘いです。

知名度があるか組織力があるか特定の地域で圧倒的集票力があるかしかありません。

河村けんいちさんにとっては地元山口の集票は見込めるとはいえ前途多難です。

二階派の後継者と目される武田良太前総務大臣がねじを巻いていると聞いてます。

自民党に「義」の政治家がいれば救いの手を差し出すに違いないと思います。

地元から縁もゆかりもない地域に追放されて今度は全国比例は酷です。

かつての梶山静六幹事長や野中広務幹事長のような政治家ならば「義」を尽くしたはずです。

梶山さんも野中さんも二階さんもいずれも田中角栄さんの派閥の流れです。

現幹事長はその系譜にある茂木敏充さんです。「義」の政治家へ脱皮を期待します。