白井聡『永続敗戦論』を読む。1

日本は戦争に負けたという厳然たる事実から目をそらし続けている。これを「永続敗戦」という。こんな立場から新進気鋭の政治学者が日本論を展開してます。

白井聡さん、1977年生まれの30代です。『永続敗戦論』という著書で注目を集めています。朝日新聞の7月3日付のオピニオンでインタビューを受けています。

日本は、アメリカとの戦争に負けたのにも関わらず、そうではなく戦争は終わったのだと自らを欺くことから奇妙な態度を取ることになります。

東京都知事だった石原慎太郎さんは尖閣諸島の東京都による購入を声高に叫びました。中国に対して尖閣は日本領土だというデモンストレーションです。

その一方で、尖閣諸島のうちの2島はアメリカが軍事演習場として借り受けているという事実を取り上げて問題とすることは避けました。

戦争に負けたという事実を認めるかどうかということは1951年のサンフランシスコ平和条約を認めるかどうかということと密接不可分です。

安倍総理は戦後レジームの見直しを政治姿勢の基本に据えています。戦後の政治的な枠組みは、サンフランシスコ平和条約によって規定されています。

これを破壊してやり直すということは極論すればアメリカともう一度戦争をして枠組みを根本から変えなければ辻つまが合わないことになります。

しかし、こんな筋論を言う蛮勇はありません。安倍総理がいくら戦後レジームの見直しを叫んだところでたかがしれてます。対米従属の中での体制見直しです。

私は白井聡さんが、安倍総理ら愛国主義者と称している人たちの主張が、いかに薄っぺらであるかを突いた点を評価しています。私の持論でもありました。

真の愛国者ならば中国に対して居丈高になる一方でアメリカに対しては従順というような矛盾極まりない態度を取ることはとてもできません。

ではどうすれば良いのか。私は戦後レジームの見直しというのならばアジア太平洋戦争の歴史の根本的再検討が不可欠だと思います。

「日本はアメリカの世界戦略を読み取れず、ずるずると戦争に引きずり込まれ、最終的には原爆を投下されて日本国を事実上アメリカに明け渡したのではないか」

こうした歴史が実証できれば、正義の見方アメリカという歴史観を抜け出ることができます。初めて中立的にアメリカを観れます。第一歩はここからです。