国葬挙行の賭けに出た岸田総理
人間である以上は100%善はあり得ません。権力闘争にまみれる政治家は特にそうです。
非業の死はそうした混沌の世界から政治家を飛翔させてしまう浄化作用があります。
安倍元総理がまさにそうした位置にいます。神格化の過程にいるように思います。
「自由で開かれたインド太平洋」という新たな地政学的な概念を示したと賞賛を集めています。
米中対立の激化を念頭に中国に対抗する枠組みの提示という意味で評価されてます。
しかし今後の米中対立の展開次第では評価は反転があり得ます。結論を出すのは時期尚早です。
世界から厳しい視線が注がれているプーチン大統領からも追悼の言葉が贈られました。
安倍元総理は戦後日本の政治家の中でも最もロシアの権力中枢に接近した人物です。
27回もの首脳会談を通じ4島一括返還にこだわらず平和条約締結を狙ったと見られてます。
赤い糸で結ばれているとまで述べた安倍元総理の賭けは失敗に終わりました。
安倍元総理の死以降対ロ外交の失敗を指摘する声がしぼんだように思えます。
こうした状況下で岸田総理は安倍前総理の国葬を速断しました。
聞くのが得意という慎重派の岸田総理にしては稀に見る迅速な決断です。
テロから民主主義を守る姿勢を示す場として国民の理解は得られると踏んだのだと思います。
自民党保守派にアピールしたいとの思惑は当然潜んでいると思います。
諸外国から賓客の来日が相次ぐでしょうから一大弔問外交の場ともなります。
リスクはあってもやる、岸田総理は賭けにも似た決断を行いました。
国葬は今年一番の国際的な政治イベントになりました。警備を含めて絶対に失敗は許されません。
無事成功すれば岸田総理の政治的立場は強固になります。岸田政権の命運を握ります。
気になるのは警備上の問題です。事件の検証は緒に着いたばかりです。
葬儀と選挙の遊説は形態が異なるとはいえ要人警護が集中することは変わりません。
国葬の行われる秋までに事件の総括し国葬の警備体制に活かすのは曲芸のような作業です。
警察庁長官を始め現行の警備関係の責任問題は棚上げせざるを得なくなります。
国葬の決定をめぐり与野党との議論が欲しかったです。国葬は国民合意の確認が前提だからです。
凶弾に倒れたという惨劇は国葬への反対の声をかき消すと高をくくったのであれば問題です。
最後にひとこと。安倍元総理が倒れた後、与野党から民主主義を守るの大合唱が起こりました。
モリカケ桜問題は安倍元総理の汚点として忘れてはならないことになります。
公文書の改ざんや虚偽の国会答弁、いずれも民主主義の根幹にかかわる課題だからです。