竹中平蔵さんの再始動に警戒の目を向けよう。
『市場と権力』を一読しました。元日本経済新聞記者でフリージャーナリストの佐々木実さんの力作です。第12回新潮ドキュメント賞を受賞しました。
郵政民営化に抵抗し職を辞した元総務省のエリート官僚稲村公望さんが推奨していたので手に取りました。出版社は大手中の大手の講談社です。
大きな本屋さんにも置いてなく、かなり探しました。立派な賞を受けているのに大新聞で書評を見ることがありません。不思議です。
本の中身は、小泉純一郎総理の懐刀として民営化の辣腕を振るった竹中平蔵さんの歩みを関係者の証言と事実を照らし合わせて追いかけたものです。
初めて知ることばかりでした。最初の研究所の出版の際に同僚の研究者のデータを無断で活用した疑いが濃厚であるとのことでした。
竹中さんは最初から市場原理主義者ではなく積極財政論者でした。驚きました。また竹中さんは研究者でありながら財を作る名手でもありました。
郵政民営化などのシナリオを竹中さんが主導で画を描きました。竹中さんは数人の側近を集めてプランを練りました。工作費用は竹中さんが用意しました。
自らの所有する億ションを処分して用立てたことが書かれています。とてつもない金持ち経済学者でした。親の財産ではなく自分で作りました。
不良債権処理をめぐってりそな銀行へ公的資金を投入し金融の安定化を進めた背景には、裏があったのではないかと指摘しています。
外国人投資家に対して日本に投資しても国家が救うので心配はいらないというメッセージが込められていたと語っています。
小泉政権当時、日本はアメリカの国際を盛んに購入しました。結果的にイラク戦争を遂行するブッシュ政権の戦費を負担する格好になっていると指摘してます。
竹中さんは、口八丁手八丁の才を活かして権力を繰り、日本の経済財政運営を結果としてアメリカの意向に沿うように誘導してきたのは否定できないと思います。
私は、2009年5月に数人の勉強会で竹中さんの話を聞いたことがあります。意見交換を含めて2時間ほどでした。柔和で弁が立つことが印象に残っています。
竹中さんは今度の安倍政権で産業競争力会議のメンバーになりました。復権の足が掛かりを得ました。警戒の眼を向ける必要があることは言うまでもありません。