現実に即した防衛論争を

岸田総理は内閣改造党役員人事後の記者会見で防衛力強化が最重要課題と語りました。

タカ派の論客が防衛費のGDP比2%をを掲げ岸田総理に迫ってくるのは確実です。

内容を吟味せずに数字をめぐる論争となるのは日本にとって不幸ですし危機を深めます。

現実の国際軍事情勢を冷徹に見極めて現実に即した議論の展開が不可欠です。

いくら理想を掲げても実際の軍事力の運用面に良い効果をもたらさなければ意味ありません。

アメリカのペロシ下院議長の対話訪問に反発し中国の軍事演習が続きました。

台湾有事が起こりえるという前提の下で防衛力整備も検討しなければなりません。

9日の日経新聞に台湾有事を想定した机上演習の記事が掲載されました。

元防衛大臣や国会議員、自衛隊の元幹部が参加し中国が軍事行動への対応を検討しました。

直ちに有事は発生しないとしてもリアルな防衛論議を深める意味で意義ある検討です。

台湾在住の日本人を安全に退避させることは可能かどうかがまず課題です。

尖閣列島周辺で日中間で武力衝突が起きれば自衛隊機による安全な輸送が困難になります。

尖閣周辺の島々に残る住民の避難も頭の痛い問題です。戦闘と避難の二兎は追えません。

有事に至る前に住民を避難させる手はずを整えることが重要になります。

民間航空機などで自発的な避難を促すだけでは間に合わないことが判明したとのことです。

総理大臣役を務めたのは自民党きっての防衛政策通の小野寺五典元防衛大臣です。

日本の防衛論議の致命的な欠陥は現実と理念のかい離がはなはだしいことです。

この絶対的な矛盾状況は今日まで尾を引いています。現実的な防衛論議ができないのです。

政府は憲法の理想と現実のギャップを小さくし整合性を取ろうとしてきました。

専守防衛を旨として必要最小限度の防衛力の保持という考え方が産まれました。

国際社会が安定していて日本周辺で武力攻撃が想定されない状況ならば問題ありません。

ところが北朝鮮の核ミサイル開発、中国の台頭と軍事力の強大化が進行しました。

極めつけがロシアによるウクライナ軍事侵攻です。日本が依拠してきた前提は崩れました。

日米同盟で日本は軍事侵攻を食い止められるのか現実に即した議論の深まりが不可欠です。

国際法など平気で無視して軍事侵攻をする国がある以上は冷徹な分析は不可避です。

立民党や共産党もリアルな防衛論議に積極的に関与すべきだと思います。

独自に図上演習を行い政府与党とは異なる立場から現実的な論争を期待します。

台湾有事はあってはならないので背を向けるでは本物の議論にはなりません。