「知の巨人」という言葉があります。該博な知識に裏打ちされた知識人です。

昨年死去したジャーナリストの立花隆さんを形容する時に使われていました。

「田中角栄研究」から宇宙論、最先端医療まで知的探求心の持ち主でした。

国民的歴史作家の司馬遼太郎さんも知の巨人のひとりに数えられます。

司馬さんにはロシア人の本質を探る評論があることを以前ブログで紹介しました。

『ロシアの特異性について』です。13世紀から259年間ロシアはモンゴル人に支配されました。

「タタールのくびき」の時代です。タタールとはモンゴル族などトルコ系民族の総称です。

破壊と虐殺がモンゴルの流儀です。司馬さんは暴力支配と書いてます。

長期のモンゴル人の支配がロシア人の性格にまで影響を及ぼしたと司馬さんは指摘します。

「外敵を異様におそれるだけでなく病的な外国への猜疑心」が醸成されました。

さらに「潜在的な征服欲、また火器への異常信仰」も定着しました。

司馬さんによれば「タタールのくびき」によってもたらされた文化遺伝子となります。

司馬さんを学術研究の分野で凌駕する「知の巨人」がいます。井筒俊彦さんです。

ウィキペディアをご覧になってください。30か国語を操ったと書いてあります。

古代ギリシャやイスラム文化の研究をはじめ古今東西の思想研究は圧巻です。

その井筒さんがロシア人について分析してます。『ロシア的人間』です。

このほど中公文庫で新版が出ました。早速買い求めて読みました。

プーシキンからトルストイ、ドストエフスキーまでロシア文学を通してのロシア人論です。

ロシア人は西洋人が理解できない得体のしれない何かを心の奥底に有していると言います。

大自然と結びついた混とんとした原初的な心の作用とでも言うしかありません。

18世紀ロマノフ王朝を開いたピヨートル大帝の帝国建設からの動きをこう総括してます。

西洋文化を狂ったかのように吸収している事実の傍ら反する心情があるというのです。

「文化というものに対して一種の執拗な猜疑心、反発心」の根深さです。

そして「いや時としては止みがたい憎悪すら常に示し続けたのではなかろうか。」となってます。

昭和23年ごろに執筆にとりかかったと書いてますので80年近く前の文章です。

しかし知の巨人の本質を見抜く眼力は現代人に深い示唆を与えてくれます。

ロシア人は西欧に対し本質的に受け入れがたい心情を有しているのです。

そのロシア人の特性をないがしろにすると暴虐が起こるということだと思いました。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻の奥底に流れているロシア人の心情を知った感じがしました。