他人事ではないトラスショック

イギリスのトラス首相が辞任に追い込まれました。9月6日に就任したばかりでした。

財源の見通しがない中で大胆な減税策を公約したことが引き金でした。

市場がイギリスの財政破綻を懸念しイギリス通貨のポンド安が加速しました。

大げさに言えば市場がイギリスを見限った行動に出たと見えなくもありません。

トラス首相は慌てて公約を撤回するなどの手を打ちましたが時すでに遅しでした。

国会論戦に臨んだトラス首相は「私はファイターだ!」と反発しました。

しかし闘争宣言の直後に辞任を決断しました。転落という言葉がはまる辞任劇でした。

経済学の創始者イギリスのアダム・スミスは市場の「見えざる手」の存在に触れました。

市場には人間の道理的判断を越えた何らかの力が働くことに言及したものです。

今回のイギリスの金融市場の混乱をみるとアダム・スミスの言葉が蘇るかのようです。

ポピュリスム的な公約に市場がうさん臭さを感じ背を向けたことを重く見なければなりません。

これは決して他人事ではありません。先立つものの見通しなしに大盤振る舞いはできません。

日本は12

1200兆円に上る国地方の借金が積まれ金利を上げたくてもあげれない事情があります。

金利の上昇は利払い費の増額に直結し財政がさらに悪化するのは一目瞭然です。

一方、物価高に対する支援策や防衛費の増額要求といった歳出圧力は増す一方です。

この状況下で果たして打つ手はあるのか財政当局は頭を抱えているはずです。

国も地方自治体も国民も日本の置かれた危機的状況に対する意識を高めないとなりません。

22日の日経新聞の一面の見出しは「円高招いた『日本病』」でした。

金融緩和に依存し問題を先送りしてきた現状に円安が警告を発していると書かれています。

イギリスほど極端ではないにしても国際為替市場によるメッセージだと見ざるを得ません。

岸田総理ら指導者たちは円安が問いかけている日本の問題の本質を語るべきです。

人口減少・少子高齢化の進展という一大構造問題を抱えながら対症療法に終始してきました。

様々な課題に対し補助金という飴が常に優先しばらまかれてきました。

国民の自立を促し歳入増へと舵を切る政策は後手に回ってきました。

いよいよない袖は振れない状況になった現状に対する回答が円安だと言えると思います。

人口減少・少子高齢化に対する根本対策を取る構造転換が求められています。

物価高などの緊急対応しながら未来構想を練り直さないといけません。

指導者たちに極めて困難な作業を断行する力がなければ日本の衰退は続き沈没しかねません。

 

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