脱炭素のモデル住宅開発の公共性を問う

トヨタが静岡県裾野市の自社工場跡地で未来都市づくりを進めています。

75ヘクタールの敷地にAIやデジタル技術を駆使したスマート都市を創ろうとしています。

二酸化炭素の排出をゼロに抑える都市づくりが可能かどうかの挑戦です。

民間企業が自らの資金で他企業ともコラボして挑戦することは歓迎されるべきです。

モデルとなる未来都市ゾーンができれば裾野市のイメージアップにもつながると思います。

小田原市を中心とする地方紙、神静民報は月1でタウン紙タイプの広告版を発行しています。

「小田原の未来をつくる会(未来会議)」の大きな意見広告が掲載されていました。

小田原市が現在進めている「ゼロカーボン・デジタルタウン」についてでした。

「世界が憧れるまちが、見えてきた」「2030年小田原に新しい街が誕生する」

賞賛の見出しが付いていました。守屋小田原市長への応援広告だと思いました。

小田原駅から歩いて5分ほどの所にある少年院の跡地に未来都市を創ろうというアイデアです。

面積は2.5ヘクタールですのでトヨタの未来都市に比べればかなり小ぶりです。

土地は財務省のものです。小田原市がアイデアを公募しているところです。

トヨタが完全に民間主導の開発だとすると行政が音頭取りをする形です。

前者は世界のトヨタが独創的な開発を進め世界への発信を目指すものです。

小田原の場合でも土地を民間企業に売却して民間企業が開発するのであれば同質です。

ただし規模が異なりますので、独自性の発揮には相当の工夫が要ります。

小田原市が関与する決断をしたということは官民共同で事業を進めることになります。

裾野市の場合と全く状況が異なることに留意しなければなりません。

住宅開発をする主体は民間企業です。公共的な意義を明確にする必要があります。

小田原市が作成した事業者向け募集要項には次の目的が掲げられています。

「市内に『脱炭素』と『エネルギーと経済の地域好循環』を実現する新しいモデルタウンを創造し、そこで得られる成果(技術、ノウハウ等)を市内外に横展開することにより、本市の『2050 年脱炭素社会実現』に向けた取組を大きく加速させる
とともに、わが国や世界の脱炭素化に貢献することを目指していく。」

「小田原市内外へ成果を発信できる」としていますが具体的イメージが不足してます。

モデル性があっても民間の住宅開発に行政が深く関わるとなると議論が必要です。

脱炭素社会の構築に資するというだけでは根拠が弱いと思います。

民間のモデル的な住宅展示場づくりを行政が手助けしたとなれば本末転倒だからです。