防衛力強化一辺倒に一石
昨日のブログで開成町で開かれた自啓共創塾のセミナーについて紹介しました。
塾の目的は現代日本人が身に着けるべき教養は何かを探ることです。
大きなテーマの案内役は元通産省局長の土居征夫(まさお)さんです。
感が良い人は名前に「征」という文字が付けられている理由が気になるかもしれません。
軍人の家系なのです。父親は参謀本部作戦課に勤務経験のあるエリート軍人でした。
土居さんが以前塾生向けに述べた参考意見がひどく印象に残ってます。
軍人は冷徹な情勢分析が習い性なので非戦勢力は軍部内に存在したという趣旨です。
政治家やマスコミ、世論によって煽られて国全体が主戦論へと流されたとの見方です。
軍人はすべて悪という戦後の凝り固まった見方の修正を求める意見です。
戦争責任論の再考にもつながり傾聴に値する意見だと思いました。
東京裁判で平和を犯したとして東条英機元総理を始め7人が死刑となりました。
旧軍幹部が日本の進路を誤った道に導いたとの歴史観が確立したと言えます。
1972年の日中国交正常化で周恩来首相は巧みな詭弁を使いました。
日中戦争で甚大な被害を受け怨念が根強く残っていた中国人民をなだめるためです。
日本を戦争へと駆り立てたのは一部の軍国主義者であって一般の人民は被害者という論理です。
日本国民は中国人民と同じように苦しんだという理屈で国交正常化反対を抑えようとしました。
国民が被害者という側面は当然あったと思いますが完全に免罪されるのは大きな過ちです。
土居さんに指摘に見られるように戦争に熱狂した国民は圧倒的だったのです。
マスコミは戦勝を高らかに報道し政治家も世論に乗って勇ましい論陣を張ったのです。
斎藤隆夫衆議院議員が戦前の国会で反戦を訴えたことが戦後高く評価されました。
経済ジャーナリストだった石橋湛山が小日本主義を唱え旧満州放棄を訴えたことも同様です。
こうした評価は逆に言えば政治家やジャーナリズムの大勢は主戦論だったことの証明です。
軍部の指導者だけに戦争の罪を全て帰すことは再考の余地大いにありと思います。
国民が主戦論の潮流に与し勢いが止まらなかったことへの検証は不十分です。
現在北朝鮮によるミサイルを使った異常な挑発行動が繰り返されています。
米中対立の激化し台湾有事があり得るとの見方が徐々に強まってきています。
日本を取り巻く国際軍事情勢が険しくなっていることは誰の目にも明らかです。
だからと言って軍事力強化一辺倒の路線で良いかどうかは冷静な議論が必要です。
素人の熱狂は過ちを犯すことは過去に実証済です。繰り返しは許されません。