中国の人権問題だけでなく日本の人権問題も
8日付の日経新聞に掲載された小さな記事が目に留まりました。
超党派の国会議員らによる新たな対中人権議連の発足に関する短信でした。
これまで中国の人権侵害の解決を求めてきた複数の議連がまとまる格好のようです。
ネットで調べてみると会長には自民党の古屋圭司衆議院議員が就任するとのことです。
経済安全保障担当の高市早苗大臣や下村博文元文科大臣も参加の予定です。
自民党の対中強硬派の議員を中心に超党派の議員への呼びかけを行うことになります。
中国の新疆・ウイグル族への弾圧は国連の人権高等弁務官事務所が報告書を出してます。
香港での政治的自由を奪う強権政治は自由民主主義を重んじる国からは看過できません。
中国政府は全て内政問題で外国から干渉されるべき問題ではないとの一貫した姿勢です。
中国は人権問題を取り上げる西側諸国の二枚舌についても厳しい反論を加えています。
歴史的に見てアジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国で植民地支配を行ったのは西側諸国です。
自由と民主主義と人権を掲げる西側の盟主アメリカ国内では根深い黒人への差別があります。
中国としては世界史や自国内の差別を無視して他国を批判するのは許しがたいとの主張です。
欧米諸国がアジアやアフリカで行った帝国主義的政策で人権が弾圧されたのは事実です。
アメリカで依然として黒人差別が存在しているのも明らかです。
しかしこれらの史実や現状は中国の人権弾圧を容認することとにはつながりません。
言論の自由が保障されている西側諸国では人権弾圧が俎上に上り議論が戦わされています。
議論自体を封殺し問題を隠ぺいしようとしている中国側の姿勢とは全く事情が異なります。
西側の現状と中国の人権弾圧を同列に論じるのは問題の解決を遠ざけるだけです。
こうした中で日本国内で中国の人権問題を追及する議連が発足するのは妥当な動きです。
ただし決定的な条件があります。中国側の人権問題のみを追及するのは不当です。
日本国内での様々な人権問題にも真摯に向き合う姿勢が土台にあって主張は迫力を増します。
名古屋出入国管理事務所で収容されていたスリランカ人女性の死亡事件は看過できません。
この種の事件が起こることは人権を問題提起する国として恥ずべきことです。
外と内とを使い分けていると中国から逆に二枚舌だと攻撃されます。
日本が人権問題に誠実に取り組んでいる姿勢自体が中国に対する無言の圧力です。
中国の人権問題だけを声高に追及し自国内の人権問題に目をつぶるのは本末転倒です。
タカ派の国会議員が中心なだけにちぐはぐな運動にならないよう留意が不可欠です。