23年前の梶山静六『祖国防衛論』

「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が報告書を取りまとめました。

日経新聞の解説記事を読みました。丸谷浩史記者のものでした。

見覚えのある名前でした。中身を読んで間違いないと確信を持ちました。

政治記者時代、私が梶山静六幹事長番だったころ日経の若手政治記者でした。

現在の肩書は「ニュース・エディター」でした。専門記者として活躍中なのでしょう。

丸谷記者は記事の中で梶山氏六さんに言及し解説を行っていました。

「自分の国は自分たちで守るとの当たり前の考えを改めて明確にする。」

意見書がこう明文化したことについて梶山さんが23年前に提唱した見解を引用しました。

梶山さんは「自分たちの国は自分たちで守る」という原点がおろそかなことを危惧してました。

誤解のないように先に述べておきますが梶山さんは単純な軍事力強化論者ではありません。

陸軍航空士官学校卒業で敗戦を経験してます。軍事力の安直な強化には慎重でした。

梶山さんは超現実主義者でした。具体に実践できるかどうかにこだわっていました。

日本の防衛論議が抽象的な議論に終始し実際に役立つのかいなか不安だったのです。

安全保障論議を根本に立ち返ってやり直すべきだというのが持論でした。

世紀末の1999年6月号の文芸春秋に『祖国防衛論』という論文を発表しました。

翌年の6月に梶山さんはこの世を去っていますのでいわば遺言と言える提言です。

様々な論議をする大前提として梶山さんは「自分の国は自分で守る」ことにこだわりました。

日米安保があるからと思考停止してしまって具体の議論が積まれていないことを突きました。

日米安保とは別に日本として防衛を考える2本柱の姿勢が不可欠だと強調しました。

空理空論にはまっている状況を打開する手立てとして「危機管理包括法」の制定を提唱しました。

軍事や災害などの各種危機を想定し実践的な防御態勢を整えようとしたのです。

エネルギー施設への攻撃、毒物やウィルステロ、情報通信への妨害行為なども挙げています。

緊急事態時には総理大臣に権限を集中させることを問題提起してます。

憲法改正にこだわらず実践的な備えを強化しようとしたところに梶山さんらしさが現われてます。

法的根拠がない時は超法規的措置となります。梶山さんはこの危険性を重視してました。

23年前の梶山さんの提起は今なお新鮮です。ようやく現実が追いついてきたといえます。

防衛力の強化をめぐる議論を進めるにあたっては国民の理解が重要です。

国民がなぜ防衛力の強化が必要か理解できる具体的議論の積み重ねが必須です。