台湾と沖縄の地方選挙から考える対中外交

台湾の統一地方選挙で与党民進党が大敗し蔡英文総統が党首を辞任することを表明しました。

台湾の統一選挙で注目されるのは台北など22の市と県の首長選挙です。

2018年の選挙で民進党は13確保していた首長ポストを6に減らす惨敗でした。

今回の結果を見ると桃園市で敗れ確保したのは5つの首長ポストです。

イギリスのロイターは「おおむね予想通りで、前回と同様の結果となった。」と伝えてます。

こちらの方が現状を正確に説明しています。日本の方がセンセーショナルです。

「平和や安定を求め、良い暮らしをしたいという主流の民意を反映した」

中国側の談話は蔡英文総統の対中国自主自立路線が拒否されたかのような言い回しです。

台湾内の地域課題を争点とする地方選挙と台湾の外交方針を競う総統選挙は別個です。

前回の統一地方選挙で大敗を喫した民進党の蔡英文総統は2020年選挙で圧勝しました。

得票率は57%でした。対中国自主自立路線が支持されました。

台湾の有権者の間で対中国自主自立路線が基本路線としてほぼ共有されたと思います。

2024年選挙で野党国民党は対中国融和路線のままでは厳しいのではないでしょうか。

台湾の地域政治は沖縄と似ています。距離も近いですが民意の反映の仕方も近いです。

沖縄県では保守の一部と野党勢力が結びついたオール沖縄体制が成立しています。

オール沖縄体制は現在の玉城知事まで連続3回選挙に勝利しています。

争点は普天間の在日米軍基地の名護市辺野古への移設です。政府と鋭く対立しています。

沖縄県民は県知事選挙を通じ移設ノーを一貫して表明していることになります。

県内の市町村選挙となると様相は異なります。オール沖縄は厳しい状況です。

自民公明系の候補の勝利が続きオール沖縄の候補は7連敗中です。

県知事選挙と地域生活に密着した政治課題が争点となる市町村選挙はねじれてます。

台湾で与党民進党候補が地方で敗れているのに総統選挙では勝利するのと相似形です。

中国のように一党独裁強権支配国家ではこのような政治状況は想定できないでしょう。

政府の方針に逆らう選挙結果が現われることは反乱ですので直ちに抑圧されます。

台湾や日本は中国とは異なり自由と民主主義を重んじる体制が確立してます。

自由と民主主義とは異なる意見の表明が選挙を通じてできることを中国は学んで欲しいです。

こうした政治的基盤があって始めて民意に基づいた政治がおこなえます。

台湾と日本の両政府は自由と民主主義体制の共通性を深く認識し合うことが大切です。

対中国に対し目に見えない防波堤となります。武力だけが国家を守るのではありません。