我慢ができない国に明日はない

私が尊敬して止まない政治家、野中広務元官房長官。
口ぐせは「泥かぶる」でした。
現代日本の政治家と政治に最も欠けている姿勢です。

自民党最大派閥の安倍派の後継争いは見苦しいです。
有力後継者と目される萩生田政調会長が訪台しました。
もうひとりの候補の世耕参議院幹事長が後を追いました。
中国との間で軍事的緊張が高まっている台湾を舞台に跡目争いです。

ふたりのうちどちらかが泥をかぶれば問題は解決します。
あなたが先にやって派閥をまとめてくれ、支えるからと。
このひとことが発せません。
決着はつかずズルズルと時間が経過し事態は深刻化します。

自民党の派閥内の動きですが日本の政治全体を照らし出してます。
全体を見れば我慢することが必要なのに問えません。
政治家が憎まれ役になることをひどく怖れるからです。
政治がまっとうにならない原因です。

国民に耳触りの良いことを言っている方が喝さいを浴びます。
防衛増税論議にその典型を見ました。
防衛増強の急先鋒の自民党内から増税反対が噴き出ました。
勇ましく防衛強化を言っていても負担は嫌なのです。
泥をかぶりたくない症候群の一種です。

負担は将来世代に回し自分たちは果実を得るとの態度です。
増税を言い出すのが唐突過ぎたなどは問題の本質ではありません。
現在の世代が負担する覚悟があるかどうかが根本問題です。
中国やロシアなどの強権国家はせせら笑っていることでしょう。
日本はいくじなしだと。

国地方合わせての借金残高は1200兆円です。
これに加えて防衛も借金となれば財政は持ちません。
多くの政治家は頭では分かっていても国民の反発が恐いのでしょう。
日本の進路がますます危うい方向に流れるのは確実です。

迷惑施設の建設をめぐって「NIMBY(ニンビイ)」があります。
「ノットインマイバックヤード」
必要な施設でも自分の裏庭は嫌だという態度のことです。
ごみの処理施設が典型です。
原発建設にも共通性があります。
メリットを受ける人は遠くにいて危険は近くの人が負う構図です。
遠くの人は危険の存在を知りません。
3・11の原発事故はこのバランスの崩れを突きつけました。

日本は政治家も国民も我慢することを避ける国となりました。
日本全体が「NIMBY(ニンビイ)」国家と化しています。
安楽に過ごしている分には危険は他人事です。
惨事が襲い掛かって初めて気づきます。
時すでに遅しとなります。
政治家が真実を語ることが最善の予防策です。