「日本人は雑草や昆虫を食べるべき!」
「貧乏人は麦飯を食え!」
1950年12月7日の参議員予算委員会での発言です。
発したのは池田勇人大蔵大臣。
のちに総理大臣になった大物で保守本流宏池会の創設者です。岸田総理が現在の会長です。
当時は戦後の混乱が続いてました。
コメを安く供給するために配給体制が続いていました。
「所得の少ない人は麦、所得の多い人はコメを食べるという経済原理に沿った方向に持って行きたい。」
本当の発言の中身です。
財政負担を伴う統制経済を修正したいとの趣旨だと言われます。
切り取られ誇張されて伝わってしまうと収拾がつきません。
いわゆる炎上状態に陥りました。
「日本人は雑草や昆虫を食べるべき!」
NHKが正月の特集番組で世界の識者にインタビューしていました。
フランスの著名な経済学者のジャック・アタリさんの発言です。
池田さんの時のように切り取って伝わると炎上しそうです。
発言の真意は日本の食料自給率の低さに警告を発したものでした。
国内自給できるような食糧を確保する戦略の構築を訴えていたのです。
優れた調理人がいるので雑草や昆虫もおいしく食べれるはずという内容でした。
発言には前段があります。
農業を魅力あるものとするよう総力を挙げる必要があるということです。
現在の状態が続くと日本から農業が消えると訴えてました。
脅しでもなんでもないと思います。
農業従事者の高齢化をみればアタリさんの発言は大げさではありません。
ロシアのウクライナへの軍事侵略により世界の食糧事情が一変しました。
食糧輸出国同士が戦争を始めたのですから食糧確保が厳しくなります。
ロシアはエネルギーの輸出国でもあります。
原油や天然ガス価格の高騰が農業生産にも大打撃を与えてます。
食料自給率38%の一大食糧輸入国日本は危機です。
エネルギー価格の高騰が農家を直撃しています。飼料を含めて輸入農産物も高騰です。
国内生産もできず輸入もままならない状態に陥る危険性があります。
農業を取り巻く環境は危急存亡だと言えます。
この事態を乗り切るためアタリさんは具体の提案を行ったと見るべきです。
食べるものが無ければ生きていけません。
あっても高くて買えなければ所得の低い人は飢えます。
日本農業のあり方を根本から見直さない限り国が持ちません。
日本は本当に切羽詰まってきています。
安全保障環境は険呑ですし食料もエネルギーもお寒い状態です。
国の存立の基本が揺らいでいることに目を向けなければなりません。