わが家のお正月映画劇場

8日から9日にかけて懐かしい映画がテレビ上映されました。
伊丹十三作品10本。すべて録画しました。
日本映画専門チャンネルという衛星放送局ご存知ですか。
その局の正月特番が伊丹十三作品一挙公開でした。

「お葬式」「たんぽぽ」「マルサの女」「マルサの女2」。
3日で立て続けに見ました。1980年代から90年代の作品です。
「たんぽぽ」、ラーメン店復活の物語です。
若かりし山崎努さんと宮本信子さんの掛け合いが絶妙です。
渡辺謙さん、役所広司さん。瑞々しい!
西部劇みたいな演出です。アメリカでヒットしたのもうなづけます。
「お葬式」、今は亡き笠智衆さん脇を固める演技者の演技も渋いです。
小声で叫び声を挙げながら鑑賞しました。

「あげまん」「ミンボーの-女」「大病人」「マルタイの女」楽しみは尽きません。

内容は社会派です。でも娯楽作品に仕上がってます。
絶妙のバランスが観客をそそるのだと思います。
シリアスな話を眉間にしわを寄せて見るのは覚悟がいります。
楽しめないという気持ちがよぎります。
社会派のドキュメンタリー作品はそこが弱点です。
必見だと録画しても疲れそうで見るのをためらいます。
笑いと涙のある娯楽作品ならば敷居が下がり鑑賞しやすいです。

社会派ドキュメンタリーと喜劇の融合と言えば良いのでしょうか。
伊丹さんが開拓した新たな領域だと思いました。
伊丹さんが世を去った後この種の作品が少なくなりました。
松雪泰子さん主演の「フラガール」、本木雅弘さん主演の「おくりびと」。
日本アカデミー賞を受賞したこの2作品は同じ流れだと思います。
底流には深刻さがあって笑いと涙の浪花節が暗さを吹き飛ばします。
リアルな現実とはかい離があることは承知の上です。
観客は現実社会の矛盾はしっかりとつかみます。
生々しく現実を切り取り赤裸々に見せつけるより訴える力は強い可能性があります。

私はテレビ記者でした。娯楽作品を見下していたところがありました。
事実に迫っていないなどと偉そうなことを思ってました。
しかし記者として社会矛盾に肉薄したかということ全く自信がありません。
事実のごくごく一部をすくい取っていただけで全体像の把握とはほど遠いです。

映画にせよ文学にせよ創作によって迫る事実があると思います。
伊丹作品はそこに笑いと涙を加味して観客を誘います。
フィクションなのに社会の矛盾はしかと受けとめることができます。
伊丹さんの後を継ぐ監督の登場を待ちます。