護憲論を越えて

岸田総理が憲法改正は先送りできないと国会で答弁しました。
国際情勢を読みそこなった意見だと思えてなりません。
平和憲法絶対堅持の護憲の立場からの意見ではありません。
現憲法の国を守る力が増大していると思うからです。

現代の戦争はハイブリッド戦争と言われます。
軍事力だけでなくその国が持っている総合的な力が問われてます。
ロシアのようなあからさまの暴力を振るう国があるので軍事力は不可欠です。
しかし軍事力さえあれば守れるのかというとそう単純ではありません。
資源や食糧など国の生存に関わる備えが不可欠です。
インターネット空間での攻撃もありますのでネット面での高度の技術力も必要です。
それ以上に目に見えない防波堤があります。

その国の国柄です。品格と言っても良いです。それを象徴するのが憲法です。
世界の尊敬を集める憲法の存在はそれ自体が国を守る防波堤です。
そうした観点から現憲法を見ると申し分のない内容です。
国際平和の希求、象徴天皇制、国民主権の確立、基本的人権の尊重。
現憲法をあえて変える必要性を見い出せません。
それどころか人権などは憲法の理想に近い姿に深化させるべきです。

私が薫陶を受けた政治家のひとりは亀井静香さんです。
かつての政界の暴れん坊は日本外交について卓見の持ち主です。
アメリカのポチにならない、中国の食い物にならない、ロシアにだまされない。
みっつの「ない」を主張しています。
これほど端的に日本の進むべき道を明示している指針を知りません。

みっつの「ない」を貫徹するためには現行憲法は強力な援軍です。
アメリカからの過度の軍事力増強圧力を跳ね返す盾です。
中国のアキレス腱の人権を突く矛です。
暴虐国家ロシアに道義を教える教本です。
水戸黄門の印籠並みの効果を持ちます。

憲法9条が日本の防衛力増強の足かせという議論はひどく浅薄です。
憲法9条があれば平和を維持できると考えるのは理想に過ぎます。
9条改憲論者も9条改憲反対論者も過去の先入観に囚われすぎです。
時代状況を踏まえ発想の転換を図るべきです。

9条を堅持し専守防衛の枠をはめたうえで備える方が防衛力を強めると考えます。
日本独自の考え方に基づいて防衛力を強化する根拠になります。
アメリカに押し付けられたとされる憲法の位置づけが変化したのです。
日本の立場を強めこそすれ弱めることはありえません。
アメリカのポチではないことを示すことは共感を得ることにつながるからです。