北方領土問題を考える。

昨晩、東大名誉教授でロシア問題の専門家の和田春樹さんの話を聴きました。東京で開かれた理論派右翼の一水会の勉強会です。

和田さんは自らも認めていましたが左翼です。一水会は、左翼系の研究者をどんどん招いて研究会を続けています。

和田さんの話は北方領土問題でした。1945年の5月ヤルタ秘密協定で当時のソ連は対日参戦を約束しました。条件は領土の拡張でした。

南サハリンとクリル(千島)諸島をソ連に与えるとしました。8月9日ソ連は満州国境を超えて侵略しました。9月1日までに北方四島を占領しました。

ソ連のこの侵略は火事場泥棒に等しいという批判があります。和田さんは連合軍の了解があって初めて取れた行動であると捉えていました。

日本は、1952年のサンフランシスコ平和条約で千島列島や樺太の一部に対する権利を放棄しました。ソ連の領土拡張を追認した格好です。

問題は、北方四島が千島列島に含まれるかどうかです。歯舞諸島と色丹島について、日本は、千島列島ではなく北海道の一部であると一貫してます。

国後、択捉については千島・樺太交換条約などを領土要求の根拠としています。和田さんはフランス語の条約原文から判断して根拠が薄いと言われてました。

1956年の日ソ国交回復交渉においてソ連は歯舞諸島と色丹島を平和条約締結後返還することを覚書で約束しました。

ここで待ったをかけたのはアメリカでした。当時のダレス国務長官がなぜ2島で妥協するのか4島を要求すべきだと要求しました。

米ソ対立の真っ最中にソ連と妥協するような外交をしたら沖縄を返さないぞということでした。ダレスの恫喝です。敗戦国日本は逆らうことはできません。

これ以降は、北方領土問題の進展はないまま今日まで至っています。和田さんはソ連崩壊という決定的チャンスを逸したのが痛かったと述べてました。

プーチン大統領は2島変換の日ソ共同宣言を土台にして交渉することを明言しています。プーチンが権力者でいるうちにと和田さんは強調していました。

私はひとつ質問しました。1956年の時はアメリカの反対があったが現状のアメリカのスタンスはどうなのかと和田さんの見解を問いました。

明快な答えはありませんでした。アメリカ抜きで領土問題決着するとは思えません。アメリカまで視野に入れて考察しないと机上の空論になると思いました。