黒澤明監督作品「生きる」から「生きるLIVING]へ
日本が世界に誇る映画界の巨匠黒澤明監督の代表作「生きる」。
初めて観たのは学生の頃でした。
定かな記憶はありませんが池袋あたりの名画座だったように思います。
私の生き様に大きな影響を与えました。
漫然と生きるのは生きるとは言えないという意識を持つきっかけとなりました。
1952年の作品です。
白黒フィルムの印影が作品の主題の重さを引き立ててました。
小気味よいセリフ回しが印象に残ってます。
志村喬さん演じるしがない公務員の立ち振る舞いが絶妙でした。
心の揺れがリアルに挙動に反映するのです。
名優とはこういう方のことを言うのだと納得させられました。
余命いくばくもないと覚悟した公務員が主役です。
ある日偶然に胃がんであることを察知しました。
それまでは漫然と時間をやり過ごすだけが仕事のような毎日でした。
命に限りあると自覚した時から生活が変わりました。
貧困地域の住民の要望を聞き小さな公園を創ることに心血を注ぎました。
公園が完成した後主人公は死にました。
葬儀に集まった上司や同僚たちが思い出を語り合います。
主人公の情熱を受け継がなければ決意を固めます。
しかし翌日になるといつの間にか全員が以前の公務員の日常に戻ってしまいます。
志村さん演じる公務員の情熱は一瞬の輝きに終わりました。
黒沢監督は鋭くお役所体質を突いてます。
主人公が命を閉じる最期のシーンは目に焼きついてます。
完成した公園のブランコに乗って歌を口ずさみます。
命短し 恋いせよ乙女…。「ゴンドラの唄」です。
ときおり消え入りそうな歌声でした。でも純な心が伝わりました。
この世の命は限りあるという厳然たる真実があります。
生きた証を残すようなまっとうな人生を歩めとのメッセージと受け止めました。
ながながと「生きる」の思い出を記したのには理由があります。
イギリスでリメイクされたのです。
昨日の日経新聞のコラムで初めて知りました。
脚本は何とノーベル文学賞のカズオ・イシグロさんだというのです!。
カズオ・イシグロさんは私よりひとつ上で同世代です。
私と同様学生時代に黒沢作品を観たのでしょうか。
ノーベル賞作家にどこか親近感を覚えます。
「生きるLIVINNG]というタイトルで全国で上映中です。
一日も早く観たいです。
黒沢作品とイギリスの監督が描く「生きる」の違いに興味津々です。
最期に主人公は歌を口ずさむのでしょうか。「ゴンドラの唄」ではないでしょう。
イギリスの古い歌なのか…。