ゼレンスキー大統領の存在感の源泉

G7広島サミットの話題をさらったのはウクライナのゼレンスキー大統領です。
超大国アメリカのバイデン大統領ではありませんでした。
ウクライナのGDP=国内総生産額は世界59位です。アメリカの168分の1の規模です。
しかしゼレンスキー大統領の存在感はバイデン大統領を圧しました。

バイデン大統領の存在感は薄かったです。
国内の政治対立から出席自体が危ぶまれていました。
ゼレンスキー大統領が登場すると完全に陰に隠れてしまいました。

政治イベントでの存在感は経済力では測れないことがよくわかります。
アメリカの経済力と比較すれば吹けば飛ぶようなウクライナの存在感が際立ったのです。
トップの置かれている現状や指導者の政治体験によって左右されます。

ゼレンスキー大統領はロシアとの激闘のまっただなかでサミットに出席しました。
国家の命運を一身に背負っての登場でした。
自身の安全も確実とは言えない状況に日々置かれています。
自らが背負っている使命、置かれている状況からくる覚悟、他首脳とは異次元です。

西側の首脳は伴侶を伴いいささかお祭り気分が伺えます。
戦時下にあるウクライナではそのような浮かれたところはみじんもありません。
ひとりタラップを降りるゼレンスキー大統領の立ち振る舞いに全て現われていました。
戦時のいでたちで笑顔は皆無でした。

祖国がロシアの暴虐にさらされ多くの都市が廃墟となってます。
その国の大統領が語る平和と核の脅威の重みは他首脳を圧倒します。
被爆地広島での発言だけに発信力は際立ちました。
ゼレンスキー大統領のための広島サミットだったと言って過言ではありません。

1990年9月私は北朝鮮の首都ピョンヤンにいました。
当時の日本政界の最高実力者だった金丸信さんの北朝鮮訪問に同行しました。
北朝鮮のトップ金日成主席との会談の場面は今も目に焼き付いてます。
握手した瞬間金主席の存在感が金丸さんを圧倒しているように見えました。

経済力は月とスッポンです。
食糧危機にあえぐ北朝鮮は経済援助を狙っていました。
経済力と首脳の存在感は別でした。
戦争をくぐり抜け一国の運命を一身に背負ってきた独裁者の迫力を目の当たりにしました。
経済の視点からのみ政治は語れないということを知りました。

指導者の存在感はその国の経済力とは別です。
一国の命運を背負っているとの使命感が指導者を大きく見せます。
民主主義国の指導者が見つめ直さなければならない側面です。

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