挑戦するたくましい子供たちを育てる


町長時代、新小学校の開設にあたり低学年と高学年小学校への分離を提案しました。
アイデアの源泉は大学時代の卒論にありました。
ウィーン生まれの思想家イヴァン・イリイチの『脱学校の社会』に触発されました。


イリイチは学校だけが教育の場ではなく社会全体が学ぶ場だと捉えました。
学校は過去の古びた権威を注入すると批判してました。
学生時代の私はその革新的な思想にはまり卒論としました。


『脱学校の社会』を書棚から引っ張り出したらメモが見つかりました。
2005年4月19日の日付が記してありました。
再生なった瀬戸屋敷の開園直前の時期です。
富士フイルム先進研究所の誘致もめどがなんとかついたころです。


高揚した気分がメモからも伝わってきます。
開かれた学校にし脱学校の社会をつくると書いてありました。
瀬戸屋敷なども活用し生涯学習のメッカにすると意気盛んでした。

脱学校の社会づくりの核となるのが低高分離型の小学校でした。
旧小学校を低学年、新設小学校を高学年。
低学年子供たちは積極的に外に出て体験学習。
高学年の子供たちは最新の知識を町民から学ぶことを目指しました。
総合的な学習を効果的に展開でき生きる力を要請できると思いました。

保護者からの猛反発を受けました。
兄弟別々の学校は困る。
学校が遠くなる。
子供を実験材料にしないでほしい。
構想は断念に追い込まれました。

日本の行政で耳にタコができるほど頻繁に使われる用語があります。
先進事例を調査するです。
参考にする先進事例がないから新しいのです。
低高分離型の小学校はその典型でした。
未開分野を開拓する挑戦する発想が乏しい中で進めるのは困難でした。

行政だけの問題として捉えるのは正しくありません。
日本社会の風土として考えた方が良いです。
開成町は進取の気性で改革を進めてきました。
そうした町であっても子供たちの教育となると保守的になるのです。

日本社会は人口減少・少子高齢化に襲われてます。
出生率は過去最低の1.26に並びました。
少子化傾向が顕著となる中でどのような子どもたちを育てるかは重大問題です。
近未来の厳しい社会を生き抜き希望をともしてもらわなければならないからです。

過去の事例に寄りかかる偏差値秀才は役立たずになります。
前例なんてないのですから。
現場に飛び込み泥まみれになって解決策を探るたくましさが必要です。
そうした人物を育てる教育は少子化対策と同時進行で進めないと間に合いません。

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