アインシュタインと二宮尊徳の警句

相矛盾する言葉を連ねるとドキッとさせられます。
矛盾のはざまに真理がありそうだと感じるからだと思います。

日本を代表する哲学者の西田幾多郎は「絶対矛盾の自己同一」と述べました。
不思議な言葉です。
”絶対的”に矛盾しているのに同一なんてあり得ません。

西田幾多郎は禅思想から発想を得ました。
禅は相矛盾する問答の中から真理を会得しようとします。
その行為を自身の哲学の世界へと拡大したのです。
直感で矛盾を乗り越える哲学と私は理解してます。

1960年前後から世界で若者の異議申し立てが表面化しました。
日本でも学生運動が吹き荒れ学園内はバリケードが築かれました。
私より少し上の世代です。

熱狂の中で一世を風靡した詩人がいます。谷川雁です。
谷川の有名な詩の一節があります。
連帯を求めて孤立を恐れずです。
連帯と孤立の相矛盾する言葉を並べて迫ってきます。

西田幾多郎の絶対矛盾の自己同一と同じです。
連帯と孤立は両立できると理想を追っています。
夢に酔う革命的ロマン主義ですが魅力的です。

20世紀を代表する物理学者のアインシュタインも矛盾する言葉を対置してます。
宗教なき科学は不完全であり、科学なき宗教は盲目だ。
不完全の原語は「lame」レームダックのレームです。
大天才が科学と宗教の微妙極まりない関係を説いてます。

不完全な人間の営みで追及する科学には限界があるということです。
一方で非合理な世界に全てを委ねてしまうことの危険性も指摘してます。
現代においてアインシュタインの警句は重いです。

人類の欲望は地球環境を破壊してます。
遺伝子操作技術は神の領域に手を染めました。
AIの発達は人間にとって代わる領域を急速に拡大してます。
謙虚さを失った時しっぺ返しを食うのは人類です。

アインシュタインの言葉をつい最近知りました。
同じような用語の反復で人の営みをたしなめた人物を思い出しました。
二宮尊徳です。
経済のない道徳は戯言で道徳のない経済は犯罪だ。
道徳経済一元論と世に言われます。

精神論ばかりを振りかざしても虚しいとまず言ってます。
その一方で経済ばかりを優先し道徳をないがしろにするのは犯罪に等しいと警告してます。
現代の地球環境の破壊は人類が犯した犯罪と言って良いです。

二宮尊徳はアインシュタインより前、江戸時代の終わりに生きた人物です。
交流があったのかと思えるほどふたりの警句は似てます。
真理は時代も地理的枠も超えるということだと思います。