ロシアという国の体質を知る必読書出版


苛酷な体験を実際に味わえば見方や考え方は強固となります。
シベリア抑留者の私の父がソビエト(現ロシア)に対し厳しかったのはそのためです。
テレビなどでソビエトについて何が報道されても頑として姿勢は変えませんでした。
いいところだけを見せられてだまされているんだというのです。

40代のロシア研究者によるすこぶる刺激的な著書が出ました。
保坂三四郎さんの『諜報国家ロシア』です。中公新書です。
歯ごたえ十二分の小著です。日本人必読だと思いました。

巻末にある保坂さんの経歴によればエストニアにある安全保障関係の研究所研究員です。
エストニアはロシアに隣接するバルト3国のひとつです。
帝政ロシア時代から常にロシアに蹂躙されてきた歴史を有します。

保坂さんは若き研究者の頃プーチン大統領のロシアに心酔してました。
あとがきで告白しています。
見方考え方を変えたのはロシアの圧力にさらされた国々の現実を知ったからです。
典型的なのはウクライナです。

2014年のロシアによるクリミア半島の奪取、ウクライナ東部への侵攻を調査しました。
ロシアが伝える情報と現実とのかい離に驚がくしました。
ロシアによる宣伝工作により誤った情報が伝播するのを知りました。
保坂さんは自分が知った事実を語り始めたのです。

ロシアという国は骨の髄まで諜報体制が徹底してます。
元スパイ機関に所属していたプーチン大統領はそのすべてを掌握し頂点に立ってます。
諜報重視の体質はソビエト時代と全く変わりはありません。
父が言っていた全てはプロパガンダという見方は正しいのです。

ロシアという国にとって事実はどうなのかというのは問題になりません。
国家方針にとって有利か不利かで全て判断されるのです。
有利だとされればそれが事実だとして宣伝されます。
今現在の出来事だけでなく歴史にまでその姿勢は貫徹されます。

ロシアはウクライナとの戦争を大祖国戦争だと宣伝してます。
ウクライナは国家ではなくロシアと同胞なのです。
同胞を守るために戦争を起こさざるを得なかったという物語です。
西側の謀略によって同胞を踏みにじっている体制を排除するという論理です。

後ろめたい感情はありません。まさに異次元国家です。
保坂さんはロシアの諜報体制の根強さを強調してます。
プリゴジン氏の反乱があったところで体質が変化することはないと見た方が良さそうです。
とんでもない国と向き合っている現実を再確認するに格好の著書です。

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